―――演劇部―――



体育館に着いた僕は
知聡を探した。

「知聡〜〜〜?」

「あ、輝翔、こっちこっち」

振り向けば、浴衣姿の知聡
紫の浴衣に金色の長い帯

「え?何」

「わかんないの?鬼の衣装
来週には、衣装有りで立ち稽古だからさ」

その場で知聡は
くるりと回転して見せた。

んーなんと言うか
知聡…似合いすぎて
僕、スッゴく着づらいなぁ

僕が首を捻ってると
知聡の何時ものが始まった。

「あ、浴衣着れないの?
俺が、輝翔の体に着せてやろうか?」

「輝翔の体に」が無ければ
嬉しいんだけどな…。

「知聡…」

ニコニコした笑顔で知聡は僕を見る

「何?」

知聡は満面の笑み
僕も屈託の無い笑顔で…

「ク・ズ☆」

あぁ、溜息が出そう。

知聡はまた謝り出した
さっさと発生練習して立ち稽古に
移ろうと僕は密かに思った。

その時、隣から清水の声がした

「嘘です!
彼はそんな事が出来るような鬼じゃないわ皆、信じて
どうか、彼を助けて」

清水の声は 綺麗だ
それに加えて、抑揚があり
力強さも感じられる
聞き入ってしまう者が多いのだ。

清水のおかげで、この物語は
綺麗に仕上がるだろうと
演劇部員は思っている
僕も知聡もそう思っているが
それだけじゃない事もわかっている。

監督がいて
脚本家がいて裏方がいて
役者がいる。

役者がいくら集まったところで
脚本家、裏方や演出が居なければ
劇は出来ないのだ
役者は、輝かせる役目だ
それを皆はわかっているのだろうか?

僕と知聡も
発生練習を開始した。



あぁ、工事の音が五月蝿いな。



体育館に響く声の他に
工事の音が五月蝿く響く
それでも流石と言うべきか
部員の声は聞こえるのだ。

なんてったて、知聡が欠伸をするのも聞こえてしまう
まったく…

「はい、それじゃ役者は舞台に上がって」

京子先生が手を叩き皆を呼んでいる
きっと立ち稽古が始まるのだろう。

僕は主役だから
どの場面にも全面的に出ている
ヒロインの清水も同じようなものだ
知聡は鬼の親友
今の僕と知聡の位置。

知聡がふわっと
浴衣を着せてきた。

「知聡?
衣装着るのって…」

「そう
来週だよ、でも今からは「輝翔」じゃなくて「鬼」だから気合い入れろよ」

知聡は以外と役になりきれるタイプだ
何より、演劇が楽しくて仕方ないみたいで京子先生の次に「鬼」と呼ばれている
親友の僕でさえ
厳しい手解きを受けるんだから。

「わかってるよ」

僕は知聡の肩をポンと軽く叩いた



今日の立ち稽古は
台本を持ってやって良いが
ほとんどの人
2、3年生は台本を持たずに動きを加えている。
僕も知聡もその一人でやっていた。

練習も中盤に差し掛かり
僕の舞台に1人の長台詞が始まった。

スポットが当たり。
僕は喋り出そうと息を吸う。



その時。


バチンと
大きな音と共に体育館の照明が落ちた。

「わっ、なんだぁ?!」

部員もざわつくが
僕は、朝の事を思い出すと同時に








こんなに闇は怖かったっけ?








僕は、震えていた。



「……危ない!!!」

知聡が叫んでいる。
何が、危ない?

「え?」

知聡が言い終わるが早いか
僕が言うか早いか
知聡は僕を突き飛ばした。










ガッシャァァァァンッッ!!!!





後ろで鳴る鈍い音
部員達からは悲鳴が上がる。

「な…にが…」

その時に
照明が戻った。

知聡は僕の上にいた
がっちり、僕を抱きしめていた。
僕は、知聡の下で震えていた
知聡の顔が少し青ざめてる。
僕は知聡が見ている方向に目をやり

ぞっとした


照明が落ちているのだ。
さっきまで僕が立っていた場所に
知聡が気付かず、その場に立っていたら
そう思うと、さらに体は震え出した。

けれど、疑問が生まれた。






何故、体育館は暗かったのに
知聡は落ちてくる照明が分かったのだろうか?



僕が震えているのに気付いた知聡は
ぎゅーっと抱き締めたかと思うと

「無事で良かった!」

と、力強く僕に言った。
考えても答えは見付からず
ただ僕は知聡に感謝をするだけだった。

そして今さら気付いた。

照明の割れた破片が飛び散っているが
明らかに、僕に向かって伸びている破片が多かった事に
怖いと思っているからだろうか?




僕しか立っていなくて良かった…
近くに清水や知聡がいたら大惨事だった

京子先生は僕達の元へ走ってきた。

「巫君!高梨君!みんな大丈夫?!」

皆は「はい」と口々に言う

「…………良かっ…」

それを聞いた僕は安心したのか
意識を手放した。

知聡が最後に名前を呼んでいた
……気がする。



















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