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今日の授業も全て終わり
家に帰る者、
委員会に出る者、
学校でお喋りする者、
部活に行く者、色々いる。

今日は僕は部活の日だ
知聡と一緒に体育館に行く予定だったが
何故か
「先生にもう一回だけ講義してくるわ、キラッ☆」って言って消えてった…
知聡は諦めが悪すぎだ…。

でも丁度いい
知聡がいない間に台本をもう一度読んでおこう。

バックから取り出した
「鬼の恋のその行方」と言う台本
知聡が書いた作品だ。

タイトルの通り鬼がある娘に恋をする話だけど…
物凄く、うるっとくる話だ
主人公の鬼役が僕。
ヒロインの娘役が「清水 琴美」
風邪は良くなったらしく、今日の立ち稽古には来ると
メールが来ていた。






この物語は「悲恋END」
娘の親が反対し
鬼は悪い奴に騙され悪人を脱獄させてしまい
その悪人は鬼が俺を逃がした
「殺される!」と騒ぎ回る
娘だけは鬼が悪くないと主張するが聞いてもらえず
鬼は追放へ…

初めて台本を読んだ時
何故か苛ついた
この鬼は心がとても綺麗なのだ
悪い人間に利用される程に純真無垢なのだでも何故、村人に鬼が悪いと言われた時
「僕じゃない」と言わなかったのだろうか…?
真犯人を教えなかったのだろうか。
鬼の娘との別れ際の台詞が
「僕が鬼だったからいけないんだ…
でも、娘様?僕が居た事忘れないで…」
なんだ…それ……?

鬼は違うなら違うと
好きなら好きと言うべきだったんだ。
僕はそれに腹立っていた。

けれど、知聡は言ったのだ
「鬼は…娘自身の幸せを取ったんだよ」って

だったら、鬼の幸せは?
そう聞いたが、知聡は「役をやればわかる」としか言ってくれなかった。

静まり返った教室の中で
僕一人
台本の鬼の台詞を言ってみた

丁度このシーンは
鬼が村から追放されるシーン…


「僕が鬼だったからいけないんだ…
でも、娘様?僕が居た事忘れないで…」


その台詞を聞いた娘は
何も言わずに、鬼の裾を放す
そして何も言わずに鬼を見つめた後
「忘れません」と一言


「僕も、娘様を忘れない
何時でも、心に娘様がいる」


鬼は、悔しかっただろう。
悲しかったろう。
それ以前に、娘の「幸せ」を願って自分の身を引いたのだ
娘もそれをわかってしまったんだろう。
鬼の幸せは何処にあるのだろう…。

きっと、それは






娘が幸せになる事――――。




なのかもしれない
僕の考え導き出した答えはこれだ。




僕は台本を閉じて
バックを持ち体育館に向かって歩きはじめた
体育館の工事の音が響く。

〜♪〜〜♪〜

ケータイが鳴ってる
知聡からのメールだ


―――――――――
■ 高梨 知聡
■ 聞いて!(-"-;)
―――――――――
先生、やっぱり場所
変えてくれなかった
(-з-)
体育館だからな
輝翔!



―――――――――



やっぱり、京子先生の壁は強かったか
僕はクスッと笑いながら
体育館に向かう足を早めた。








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