―――2―――


朝。
制服のまま寝てしまった僕は
時計に目をやった

「5時15分…
…少し、シワがついちゃった…」

家ではまだ母さんが寝ている
物音を立てないように
僕は家を出た。

僕は、桜の木が気になっていた。

委員会議もあるし
学校にはシャワー室がある
シャワーなら学校で浴びる事にして

桜の木の元まで走った
あの、女の子がいない事を祈りながら…





祈りも虚しく
桜の木に近付くとすでに女の子はいた
泣きながら………

あの、女の子とは関わりたくはなかったが
あの、桜の木には関わらなくてはいけない気がした
僕は何かに惹き付けられるように
桜の木に触れた

今日も風が強い
桜の花弁が僕に降り注ぐ。

触れてみて気付いた
桜が泣いてる…


昨日の桜は寂しがっていた。
今日の桜は悲しがっている。

不思議だ、胸に何かが込み上げてくる…

僕は、必死だった
奥歯を噛み締めながら
込み上げてくる涙と、堪えきれない
恐怖、寂しさ、苦しさ
それに堪えていた。

これは、きっと桜の木の気持ちなんだろう

唐突に少女は口を開いた。

「やっぱり分かるんですよね
この桜が悲しんでるの」

僕は何も言わずに頷いた
少女は続ける。

「貴方が昨日感じた恐怖を
この桜が感じているの」

「?」

どういう事だ?
あの“闇”の恐怖を桜が感じている?

「この桜に、誰かが
貴方を堕とそうと細工をしたのね…」

平然と少女の口からその言葉が出た
どういう意味だ?

「堕とそうと?いったいどういう…」

「貴方には能力〔ちから〕があるわ
私と同じ“光”のね…いや細かく言えば
貴方の光は本物ではないんです
その能力を消そうと狙ってる奴がいるの
それを止めたいの
きっと、この桜の木に闇を溜め込んで
いずれ貴方に光を使わせるつもりなんでしょうね…」

この子は一体何を言ってるんだ?

「僕はそんな力は持ってない
わからないよ、君の言ってる事…」

ひどく、気持ちが悪い…。

「光や闇が多く行き交うところには気を付けて下さい…
今、不安定な貴方が光の力を使ってしまうと
貴方は、闇に捕らわれ一生
光には戻って来られないわ」

もういいよ…

「僕、学校があるから…もう行く」

やっぱり、この子は
僕の平凡を壊そうとしているんだ
だったら、必死に僕は逃げなくちゃ

僕は、その場から勢いよく走り去った。
「待って!私の話を聞いて下さい!」

待たないよ。
待てないよ。

僕は、ひたすら走った。















「どうしてわかってくれないの?
貴方に何かあってからじゃ遅いのに…」

少女は走り去った輝翔の姿を目で追いかけるしかなかった。

輝翔の足の早さには、少女はついてはいけなかったからだ

少女は再び桜の木を見つめ
手を伸ばして、撫でるように触った後小さく呟いた。

「どうか、彼を守って…」











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