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「……此所は?」

僕は、首だけを器用に回し
周りの風景を見渡す。

此所…
人通りの少ない
裏門の近くだ

意識を取り戻した僕の周りには
一面、桜の花弁だらけ
ぼや〜っとしていた意識は其処ではっきりとした。

全身が花に包まれている…
足の爪先から頭の天辺まで
桜の花弁だらけ
…どっから集めてきたんだか

そして、思った。
何だか死んだ人みたい…

…………………………………え?

「…うわ!死んだかと思った!」

その場に立ち上がり
服に付いた桜を払い除ける
きっと周りから見れば死んでいるように見える筈…
正直焦った。立ち上がった時に足が痛む
先程の出来事を“夢ではない”と言う確証になってしまった。

「一体…どうやってあの闇から抜け出したんだろう」

桜の花弁とにらめっこをしていた僕に
少女の声が掛かり
僕は、少しびっくりしながら少女の声のする方を向いた。

「起きたかしら?」

「え?」

桜の木の下の女の子…?

淡いみどりの髪の毛
青緑の瞳。の僕とは正反対の華やかな子
桜色の髪の毛に
黄色の瞳。
緑色のワンピース
真っ白な肌

昨日桜の木の下でぶつかった女の子だ何故、此所に居るんだろうか
この、凛とした声。

もしかして…

「君が助けてくれたの?」

少女は何を言うでもなく
僕の瞳をじっと見ていた

ゾクッともしたが
ドキッともした

そして徐に少女は口を開いた

「貴方が…標的になってしまっている…」

「は?」

そじゃあ僕の質問の答えになってない

女の子は頭を振ると
もう一度、さっきよりもじっと僕を見た。

「貴方、覚えていますか?
昨日あの桜の木の下で私とぶつかりましたよね?
其所が悪かったんです…あの
とても言いにくい事なんですけど…
貴方は狙われてるんです」

ふわりと地面の桜の花弁が宙を舞う
何を馬鹿な事を言っているんだ?
この娘は…

「誰に?何に?」

あまりにも女の子がおかしな事を言うから
僕は笑ってしまった

少女は口ごもりながも
言葉を繋いだ。

「それは…“闇”に……」

何故かわからなかったが
心臓を鷲掴みにされている気分だった
僕は女の子の言葉を遮り
言葉を紡ぐ

「何を根拠に…てか、“闇”って…」

根拠になんてあるもんか
僕はとにかく強気でいないと
立っていられない気がした
少し息が荒くなっている気がする

「私にはわかるんです
貴方に、私と似たような能力〔ちから〕がある事」

馬鹿馬鹿しい

「は?何
僕を助けてくれたのはありがとう…でも」




僕は今の平凡でいたいから




「もう、関わらないで」

僕は足が痛かったのも忘れ
走り出していた
走って逃げれば
きっと、あの娘も忘れる筈だって

「待って!」

待たない
止まらない
止まりたくない!

この世にそんな不思議な事はあり得ない
魔法何てのも無い
科学で証明されている
“闇”あの真っ暗闇だって
あの真っ暗な空だって
きっとビルの陰にいたとか
疲れていた僕の見間違いだとか…
そう思わないと
また、恐怖が蘇ってくる
僕は走りながら、身震いをした
月を見ながら
家まで走った

後ろにはあの女の子はいない

「良かった…」

母親の作るスープの香りがする
時計を見れば
8時15分

学校を出てから
2時間もたってる

「お帰り輝翔
今日は委員会だったの?遅かったわね
輝翔の好きなスープ作ってあるわよ
飲みなさい」

優しい何時もの母さんの声…

「母さん…ありがとう」

母さんの声を聞いて安心した僕は
とてつもない疲労を感じたが母が作ってくれたスープを食べてから
部屋に戻り寝る事にした。

「明日は、朝イチで委員会議だからよく眠らなくちゃ…」











そう。
この平凡を壊す者が現れるなら僕は誰だろうと
止めてやる。






母の持ってきたスープを
食べた後、勢いよくベッドに潜り込んだ僕は
直ぐに睡魔に襲われた
じんわり、布団に自分の体温が伝わっていく

うつらうつらしながらも
明日の「委員会義」の内容を頭の中で纏めていながらも
目が閉じられそうになる。

「明日の委員会義は…」

あー
流石に眠い僕は眠りについた。













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