―――とある、夢―――












暗い――――。
真っ暗だ――――。

此所は何処?
何も見えない
凄く…

―――――怖い!!!



恐怖に胸が一杯になる
自分の手さえも見えない暗闇の中を
僕はただひたすらに
がむしゃらに走っていた。

「――……っは……っ」

息だけが上がる、足がもつれる
心臓がバクバクと五月蝿い。

あぁ……もう!
















「…っ……!」

夢?

ごしごしと目をこすりながら
ゆっくり布団から立ち上がる

「……うわー
汗びっしょり早く着替えちゃお……」

全身に汗をかいたらしく
地肌に張り付く
パジャマが気持ち悪い
僕は手早くパジャマを脱いだ。

全く寝覚めが悪い。

制服のシャツに腕を通しているときに
何気無く、ケータイを見れば“着信あり”と、なっている

「誰だ?朝に…」


ケータイを開いてみると
全く知らない電話番号

ゾクリと
背中が鳴いた

急いでその着信を消す。

半分しか着ていない
シャツがみっともなかったが
そんな事、考える余裕はなかった。

「別に…こんなに焦らなくったて…」

自分で自分を突っ込んでしまうなんかもう、しょうもない。

あの夢のせいだな。

「輝翔(しょう)?
起きたの?朝ごはん片付かないから食べちゃって」

「…!え…ぁあ」

母さんの声で、何かがパチンと切れた音がして
慌ててケータイの時計を見るた。

「…8時か
………………………えっ?」

ヤベぇ
遅刻すんじゃん!!!!

着替えかけの制服を掴んで
適当に着替える
ネクタイを締めるのが億劫だ

僕はブレザーを掴むと階段を下って行った。






今日と言う日は…

階段をかけ降りた僕に待っていたのは
母親が機転を効かせて作ってくれた
卵サンドイッチ。

走りながら食べれば間に合うかな?

「何で起こしてくれなかったんだよ!母さん!」

母さんはへらっとした顔で
サンドイッチの入った皿と
お茶の入ったペットボトルを僕に差し出した

「何度も、何度も、何度も何度も!「輝翔」って呼びました
それで起きないなら悪いのは、誰かなぁ?」

「…………す、すみません」

反論出来ねぇ…

僕は仕方なく
サンドイッチを口に含むと
ペットボトルをバックに押し込んだ
時間が無い!

「行ってきます!」

とにかく、学校まで走ろう!

走るのは嫌いじゃない、むしろ好きだ。
短距離走も一位だし
長距離走も一位だし
地区のマラソン大会も一位だった
それぐらい好きなんだ。

家の近くの曲がり角には
大きな桜の木が立っている
凄く大きい。

毎年、綺麗な花を咲かせる
今はその時期。

風の強い日は桜の花弁のシャワー
夜になれば、近くの街灯が当たって
素敵な夜桜。

昨日も今日も
風の強い日

そう言えば昨日は…
桜の木の真下…丁度曲がり角で女の子にぶつかったんだっけ…

何気なく桜の木を眺めながら
曲がって走って行く

ザアザア桜の木が鳴く

例の桜の木を曲がる時だった…






あれ?







何故だろう…
何でだろう…

僕は時間も忘れて
立ち止まる
そして桜の木にそっと触れてみた

今日の桜の木は寂しそうだ…。

風は昨日に増して強く吹く
花弁は、むなしく僕に降り注ぎ
食べていたサンドイッチの上に桜の花弁が一枚乗った。

その時に現実に戻された
僕は桜をじっくり見る程ロマンチストじゃないのに…

「…やべぇ、遅刻するっ!」

名残惜しく桜を見ていた僕の瞳に昨日見た少女が瞳の隅に写った
だが、僕はもうその時には
桜の木を曲がりきってしまった後
動き出した足は止まらない
何時もだったら、余裕な時間があるから
確認しに桜の木まで戻るが
今日はそんな時間は無い。

今日はきっと
あの桜の木の寂しそうな雰囲気と
あの桜の木の女の子の事が気になるだろう

気持ちがムンムンしたままだったが
遅刻はまずい…

サンドイッチを食べ終えた僕は走るのを速めた



















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