―――始まりの桜―――






柔らかな風が吹く春に
僕は彼女に出会った


漫画みたいな出会いだったなぁ…と
今でも僕は思っている

走るのが好きな僕は
その日も
何時もの道を走っていた。

桜がざあぁっと、降ってくる曲道…
あの日の、大きな桜の木の桜吹雪の綺麗さ
今でも忘れない。












其処から彼女が出て来たんだ――――。












「っと!」

「きゃっ!」

僕は、誰かにぶつかった
可愛い、女の子だ…

「痛ててて…
ごめん…怪我ない?」

僕は彼女に向けて慌てて手を差し出すが
女の子はびっくりした顔をしているだけで
僕の差し出した手を握ってはくれない

伸ばした手が空回り
結構こっぱずかしいんだけど…。

強い風が吹く
桜の花弁が、僕と彼女を覆った
その時に、ぐっと手を握る感触があった

「ありがとう…怪我は…ないです」

「そう…なら良かったよ」

彼女を立ち上がらせ、手を離した僕は
それじゃ と軽く言い残して
走り去った

後ろで彼女が
泣きそうな顔をしている事も知らずに……。















―――――その時の僕は
運命が変わる程の出会いをしているなんて
気付く筈もなかった。




















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テーマ「人外ファンタジー」
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