正義は友情の為にあり
「…………。」
沈黙がふたりの間に流れる。凉は冷や汗がだらだらと止まらずにいる。
その上、時折吹いてくる風は生暖かく、一層重い雰囲気を醸し出されているような気分だ。
「…永瀬さん」
沈黙を破ったのは志村妙だった
『はっ!ははははははい!!!』
まるで嘘がバレた子供が説教されるかのような感じである。
「さっき…」
ダメだっっ!!!
『お願いしますっっ!!!さっき見たこと聴いたこと感じたことは全部忘れてくださいぃぃいい!!!』
「え!?あ、あの…」
『あれはただ単にノリですノリ!!!海苔じゃなくてね。あれは見せちゃいけないというか!!!学校にバレて退学とかになったら親に何言われるか…ホント!!!ホントに絶対学校には言わないでください!!!』
とりあえず体制は土下座です。この際ご所望ならばスライディング土下座でもジャンピング土下座でも何だってやってやる。
さっききの勢いは何処へ消えたのか、凉はひたすらに地面に頭をつけて全力で訴える。
「…え、えっと永瀬さん、そんな気にしないで。むしろ助けてもらったのにそんなことしないわ。」
何なんだこの天使は…。
そう思いながら彼女を若干見とれていると手を捕まれて軽く引っ張って立たされる。
「私は志村妙です。今日転校してきた永瀬凉さんよね?危ないところを助けてくれてありがとう。」
お礼を言われる機会はとても少ない自分にとって、この展開は何だか身体中がくすぐったい気持ちに駆られる。
『い、いや助けるのは当然っていうか当たり前って感じで…』
すると志村妙は少し驚き、たちまちまた優しく微笑んだ。
「とても優しい人なのね。私たちいい友達になれると思うわ!これから宜しくね!」
そう言って志村妙は満面な笑顔に変わり、心からの言葉だとわかった。その笑顔で今までの自分が気にしていた些細なことがどうでもよくなる気持ちになる。
「あのね、いきなりで悪いんだけど…」
『どどどっうしたの!?』
さっきの天使な笑顔は無くなり顔は不安げに歪んでいる。突然な出来事でどうしていいか戸惑ってしまう。
「せっかく友達になれたのにこんな事を言うのは申し訳ないんだけど…」
え??何??何だか嫌な雰囲気が漂ってるけど大丈夫かな…。
「私ね…野生のゴリラに付きまとわれてるのよ…」
えぇぇぇええええええ!!!
「動物園から脱走したゴリラらしいんだけど、何でか銀魂高校に住み着いててね…」
なおも説明を続ける志村妙はある意味で最強なんだと思う。
何だか友達が出来て嬉しいような、不安が増したような気がするような何とも複雑な気持ちで転入初日は終わった。
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