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腑に落ちない。土方さんは何とも思わないのだろうか。


『隊長、私腑に落ちないんですけど。』


沖田と椿は頭を冷やしてこいと土方に会議室から追い出され、庭に居る。


「だからなんでさぁ」


『だって!あのヤロー何ともないような顔して指示出してたじゃないですか!それが気にくわないんですよ。』


「そーですかぃ」


何やら後ろからがさごそと聞こえてくるが、沖田が居ない方に向けて熱弁している椿は全く気づかない。


何だってんだよ全く。土方さんといい、隊長といい。何でそんな簡単に割り切れるのか不思議でたまらない。さっきはあんなに隊長怒っていたのに、今じゃ何ともないような顔だ。


『だってあのガマっ!私達のことなんてゴミのようにしか思ってないじゃないですか!!!しかも、この屋敷の蔵から転生郷が出てきたんですよ!!!あんなやつまだ守る価値なんてありますか!?』


ダメだ、また頭に血が上ってきた…。





「…椿、何で俺が真選組に居るか分かりやすかぃ?」





唐突に沖田隊長がしゃべりだした。


後ろから薪が燃える音が聞こえてくる。どうやらガサガサしていたのは焚き火をするためのようだ。


『…分かりません。』


椿は体育座りに座り振り向かずに応えた。


「学もねぇ、居場所もない、剣しか能がない俺達ゴロツキを拾ってくれたのは紛れもねぇ近藤さんでさぁ。だから近藤さんが護るって言ったものは俺は何でも護りまさぁ。例えそれが幕府のガマだろうがねぃ。」


その言葉に一瞬にして椿は沖田の決意が伝わった気がした。それは何が何でも曲げない、武士道という奴だろうか。


椿は、何の為に彼らが真選組に居るのかを、自分は分かっていなかったのだと感じた。むしろ考えた事など無かった。


椿は何も言えずに黙り、抱えていた膝を更にぎゅっと強く抱いた。


今まで真選組に居て、自分は何を見て、何を学んできたのだろうか。


父が行方不明になり、勝手に入隊させられて、自分はなんて苦労人だなんて少しでも考えていた自分に恥ずかしさがこみ上げる。


それ以上に苦労して、でも自分の決意した道はけして曲げずに進む人を目の前にして、ぎゃあぎゃあ騒ぐ自分はなんて滑稽だろうか。


『…ごめんなさい。』


「今夜は冷え込みそうでさぁ…あ、なんか言いやしたかぃ?」

聞いてないのか、あえて聞かなかったのかその時の椿にはわからなかった。








「何してんのォォォオオオ!!!お前!!!」


俯いていて気づかなかったがどうやら土方さんが来ていたらしい。


というか、いつの間に沖田隊長はガマ官僚を連れてきたのでしょうか…。そして十字架にくくりつけて火炙りの刑をしているのは何故??


騒ぐガマを沖田隊長は口に薪を突っ込んで黙らせる。


もぺって言ったよこのガマ…。

「早い話、真選組にいるのは近藤さんが好きだからでしてねぇ。」


良いこと話してるのは分かりますが、隊長、流石にガマさんが可哀想ですよ〜…。あぁ隊長の目がSの目になってる…。


「俺や土方さんみてーな性悪がいて、それで丁度いいんですよ真選組は。」

ガマ官僚にばっかり目がいって話は全然きいていなかったけど、なんだか、その時の2人は長年付き合ってる者同士しか分からない雰囲気が醸し出されていて、少し羨ましいと椿は訳もなく感じた。


「薪をもっと焚け総悟、」


「はいよっ!!」


「浅川、てめぇも突っ立てないであたれよ。」


『うふぇ!?あ、はい…』


普通に火に当たっちゃってるけど、もちろん目の前にはガマさんがいます。やべぇ、めっちゃ目が合う。



なんだか訳わからん。


色んな意味で自分がまだまだだっていうのは実感した。けど、くよくよする前にとりあえずこの人達の背中を追いかけて行こうと思う。







暫く暖まっていると、ガマの顔の横を銃弾がかすったと同時に門の方が騒がしくなっていた。

「立ちなせぇ椿、奴さんからおいでなすったぜぃ」


「ふんっ、派手にいこーや」


あぁ、やっぱりこの二人の背中は大きすぎるかもしれないな自分には…でも…。


『はいっ!!!』


でも、無性について行きたいって思うこの感情って何なんだろうな。


「全く喧嘩っ早い奴等よ、あの三人に遅れをとるな!!バカガエルを護れエエエエエ!!!」


三人は後ろを少し振り返り、ニヤリと笑い。掛け声と共に敵に向かっていった。




次の日の新聞に、このことが大きく報じられることとなる。


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