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"それ"を見つけた瞬間、辺りの空気が冷たくなるような感じがした。
ザキさんは無言で小分けにされているそれを開けて中身を確かめるように少しだけ舐め、そしてすぐにペッと吐き出した。
「…間違いない。これ転生郷だよ。」
椿は息を飲む。流石に真選組という組織の中にいれば何度も聞く麻薬の名前である。流石にこんな形でお目見えするとは思いもしなかった。
さっきの雰囲気とは打って変わって、2人とも一気に仕事モード突入だ。
『どうしますか?今すぐ土方さんの所に戻りますか?』
「うん、そうだね。でもまだ報告はしなくていいから。この家の持ち主を警護してるわけだし。」
『了解っす。』
2人はその場からすぐに立ち去った。もちろん壊れた扉は適当に直したけど、まぁあの調子じゃあまたすぐはずれそうだけどね…
あぁ、後ろから何かが倒れる音がしたけど気にしないで行こうと思います。
「山崎ぃぃぃいいいい!!!オイッ!浅川もどこ行ってやがったっ!!!」
「げっ俺副長のこと怒らせてたんだった!!!」
『なっ!!!さっきまでのシリアスモードはっ!!!ガッツ緊迫ムードだったじゃん!!!』
「うるせぇぇええ!!!テメェら職務放棄で2人とも切腹だコラッ!!!」
追いかけっこの始まりである。迫るのは土方コノヤローの般若面だ。
少し山崎退という人物を尊敬した自分が恥ずかし!!!
ザキさんなんてミントンのラケットみたいにアミアミにハゲてしまえっ!そして最終的に世間様の笑い物になればいいんだっ!!!
土方が椿の頭をがしりと捕まえて山崎を追い詰めた時だった。
ドォォオオンという耳を引き裂くような銃声が辺りに鳴り響く。
「局長ォォォオオ!!!」
誰かの声が聞こえ、椿の目には銃弾が当たり近藤が嫌にゆっくりと倒れていくのが見えた。
あとは身体が勝手に動いた。
倒れた近藤さんの所に駆け寄り、胸元のスカーフを引き抜いて急いで止血する。土方さんがザキさんを調べに行かせた声は一枚フィルターがかかったみたいに遠くで聞こえたように思えた。
「ふんっ猿でも盾代わりにはなったようだな。」
は?
コイツは今何て言った?
そのままガマガエルの天人はどこか自分の部屋に向かおうとしているようだ。
身体全身に一気に熱が回ったような、逆に全身から感情と言う熱が抜けたような感覚が椿を襲う。
椿の中に怒りという感情以外全てが無くなった。怒りを抑えるという考えは微塵も無い。
自然と手は刀の柄へと伸びていき、刀に手をかけて引き抜く寸前に土方さんに止められた。
どうやら沖田隊長も同じことをしようとしたみたいで同じ体制である。
『離してください。』
「聞けねぇな」
今は自分を見る冷静な土方さんの目が堪らなく憎く思えた。
『…離せよ』
「止めとけ瞳孔開いてんぞお前。」
あぁ…。真選組に入ってから初めて敵以外の奴を殺してやりたいと椿は思った。
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