08
(8/13) 

爆発音が聞こえた気がした。



犬が激しく鳴いている気がした。


『くかぁ〜』


しかし、青い空の下椿は気持ちよさそうに昼寝の真っ最中であった。









土方は爆発のあった場所近くのビルで双眼鏡片手に、今走り逃げている人物達を鋭い目で見ている。


「とうとう尻尾出しやがった、山崎何としても奴らの拠点抑えてこい」


「はいよ」


そう言って山崎はすぐに踵をかえし、目的のために足早にそのばから離れていった。土方は吸っているタバコの煙をぷはぁ〜と出し一服をついた。


「天人との戦で活躍したかつての英雄も天人様々の今の世の中じゃただの反乱分子か」



そう言って手にとって見ていたある人物の人相書きをくしゃりと潰した。


「この御時世に天人追い払おうなんざたいした夢想家だよオイ、沖田起きろ」


そして潰した紙を沖田にトンっと投げてぶつけた。


「お前、よくあの爆音の中寝てられるな」


ムクッと効果音がつきそうな起き方でアイマスクをつけた沖田が起きる。


「爆音って…テロ防げなかったんですかぃ?なにやってんだぃ土方さん。真面目に働けよ」


「もう一回眠るかコラ。つうか浅川はどうしたお前の部下だろうが。」


すると沖田はかったるそうに窓の外を見た。綺麗な天気だと思いながら。


「あいつならさっき便所って言ってあくびしながら屋根の上にいきやしたぁ…そういやぁかれこれ20分前ぐらいの話ですかねぇ。きっと大の方なんでぇ」


「んなわけあるかっ!!!あのクソガキ…」


ピキリと土方の顔に青筋が浮かぶ。便所と言って屋根にのぼるとか、サボる気満々じゃねぇか。


「で、土方さん今度はどこの大使館だったんですかぃ」


「…戌威星だ。」


土方かたは頭をガリガリとかくしぐさをした。


「ありゃりゃぁ地球に最初に来た天人じゃないですかぃ江戸城に大砲ぶち込んで無理矢理開国させた奴らのお家によくもまぁやりやしたねぇ…。こりぁあ面倒なことになりそうでさぁ」


「ふんっ天人の館がいくらフッ飛ぼうが知ったこっちゃねぇよ連中泳がして雁首揃ったところをまとめて叩き斬ってやる」


カチャリと音をたてて土方はゆっくりと鞘から刀を抜いて自分の顔の前に持っていきなぞるように刀身に触れた。


「真選組の晴れ舞台だぜ楽しい喧嘩になりそうだ」


土方は妖艶に笑った。




「つか浅川っっ!!!てめっいつまで寝てんだコラッ!!!降りて来いやぁぁああ!!!」


窓枠にガシッとつかまり屋根の方へ叫んだ土方は、さっきまでの鋭さは微塵もなく


ただのダメな部下を叱る上司の姿に変わったのは言うまでもない。






「山崎、ここであってんだな」

「間違い無いです。ここに入って行くのを確認しました。」


そういってビシッと敬礼をする山崎に土方は「わかった」とだけ返し近藤に目で合図した。




「よし。行くぞおめぇらっっ!!!」


「うぉぉぉおおお!!!」


近藤の掛け声で一斉に真選組は"池田屋"に入っていった。






「銀さん…」


そんなまだ幼さの残る少年のような声が聞こえた。その声を土方は聞き逃さず、その部屋の襖に容赦なく蹴りをお見舞いして朗々と叫んだ。


「御用改めである!!!神妙にしろテロリストどもっっ!!!」


真選組は声を張り上げて中にいた土方を中心にテロリスト達の部屋にズカズカと入っていく。

しかし、こんなピリピリした空気の中でも呑気な奴がいるわけで…


「いやぁ流石土方さんでさぁ
襖の修理代なんて全くお構いなしなんてねぇい」


『ホントですね隊長!あ〜あぁあんなに声張り上げちゃってぇ恥ずかしくないんでしょうか!どうなんですか隊長!』


一番隊隊長と平隊長が回りに聞こえるか聞こえないかぐらいの声音で話し始めた。


もちろん、隣にいる土方には丸聞こえだが。


「椿、確かに客観的に見るとアレはかなり恥ずかしい…そりゃものっそい恥ずかしい…」


沖田は語り口調で椿に優しく言い聞かせた。


「でもなぁ椿あれは仕方ないんでさぁ…。副長という座についた者の宿命なんでぃ恥ずかしさは。よく見て勉強しなせぇあの恥ずかしさを。」


『わかりました隊長!あの恥ずかしさをよく見て勉強しますね。やっべ!恥ず恥ず!!!』


お互いに無表情で会話しているだけあって真剣なんだかよくわからない状態に回りにいた隊士は少したじろぐ。しかも片方はあくびを噛みしめているのが明らかにわかる。


「てめぇらっ…えぇい!一人残らず討ちとれぇぇええ!!!」


部下2人にに土方は若干キレそうな気持ちを抑えシカトすることに決めた。


「し、真選組だぁぁぁああ!!!」


「イカン逃げろォ!!」


長髪の男がそう言うと蜘蛛の子を散らすように皆逃げ出す。しかし、そんなことは予想の範囲内の真選組は各々の隊の命に従い浪士達を追いかける。


沢山の喧騒の中、土方、沖田、椿の3人はその中にはよく目立つ銀髪の男と赤い服で傘を持った少女そしてメガネを追いかけることにした。





← →

backmark


「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -