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(7/13) 


自分が入隊して、もうすぐ一ヶ月が経つ。


あの後、正式に真選組への就任が決まって、晴れて一番隊の隊士になりました。正直素直に喜べません。どうしよう、今、スゴく泣きたい。


上司の沖田隊長は自分にばっかり仕事を押し付けて何処ぞへいつもサボリに行ってしまうんです。

私はまだただの平隊士なのにっ!!!

まぁ、だからといって自分がちゃんと仕事する訳じゃないけど…


あ!そういえばこの間ねあの鬼副長がね…。


「おい。お前誰と話してんだ。」


『あ、副長。』


後ろを振り返ると、晴れて自分の上司になった副長こと土方十四郎が立っていた。


『誰って、私が愛してやまない猫のネコ太郎にです。ネコ太郎は私の良き相談相手ですよ。』


「にゃー」


「人間に相談しろ!!…しかも、なんだ『ネコ太郎』ってネーミングセンスわ…」


椿はネコ太郎と遊んでいた庭先からぱっと立ち、土方のいる縁側の方えズンズンと進んでいき


『ネーミングセンスが…




何ですか?』


とても爽やかな笑顔で土方に詰め寄った。


刀を突きつけて。



「いや…何でもねぇ」



椿は笑顔のまま『そうですか』と一言いい、またネコ太郎と遊ぼうと縁側から降りようとする。


「おい、猫と遊ぶのもいいが朝の会議はちゃんと出ろよ。今日の会議は重要な話しすっからな」


『あいあいさー』


と土方に背中を向けたまま了解の意を示した。


相変わらず態度でけぇなぁ…。

と思いつつも土方はあえて触れずにその場を離れた。






「トシ、全員集まったか?」


「いや、あの二人がまだだ…。」

土方は腕を組ながらビシッと顔に青筋を浮かべた。

「クソっ…やっぱりアイツを入隊させたのは間違いだったんだ…。」


隊長と平隊士が重要会議に遅刻ってどうなんだっっ!!!と心のなかで叫びながら待つこと数分。


『さーせん。遅れましたぁ。』
「右に同じでさぁ。」



静まり返った室内にガラッと襖が開く音と、無駄にきれいな敬礼をした椿と寝ぼけた顔をした沖田が並んで立っていた。


「おめぇら…よくのうのうと入って来れたなオイ」


普通に部屋に入ってきた二人に対し、怒りを通り越してもはや諦めの色が土方に浮かぶ。


「まぁトシ、あの二人を咎められる奴なんてそうそういないさ…」


近藤もどこか遠い目をしていたため二人の改善はきっと無理だろうと土方は悟ったのだった。


「チッ、これで全員そろったな…これから会議を始めるぞ。」
その一言で会議室の空気が変わったような気がした。




「今日集まってもらったのは他でもない、最近巷を騒がしているテロ事件についてだ。」

誰かが不意に唾を飲み込んだ音がした。

「ここ最近、毎日のように小規模な爆弾テロが発生しているのは知っているな。そこでだ、俺らにもテロ防止の為に今日から各大使館を監視し、怪しい奴がいないか警備する事になった。」


そこで近藤は一旦言葉を切り改めて話し出す。


「まだ犯人の情報が少ないが、ある情報ではあの"桂小太郎"も動いているらしい…


一刻も早く犯人を捕まえるためにも一人一人が注意して監視に当たるように。以上だ。」


会議が終わると同時に土方が、今日の警備場所の配置と軽い注意事項を述べて、会議は解散となった。


しかし椿#は引っかかることがあり、だいぶ人数が減った部屋で一人考え事をしている。

「どうしたんですかぃ。スッカラカンな頭で考えたってなにも思い付きやせんぜぇい。」


ふっと顔を上げたらそこには我等が一番隊隊長を始め、局長、副長がいた

『何気バカにしないでください沖田隊長。』


と睨みつけるが、流石のドS王子に通用するわけもなく、あっさりと流されてしまった。

「まぁ、総悟の言い方は悪いが椿ちゃん何か考え事かい?」

近藤が向かえ側にどかりとすわり、それにつられるように二人も座った。

一緒に仕事や生活をしてきて思ったことがあるのだが、なんだかんだ言って近藤はいい人なんだなぁと改めて思った。


ゴリラだけど。


「え!?椿ちゃん今何かいっ「おおかた、今日のサボる時のいいわけでも考えてたんじゃねぇのか。」


近藤の発言は見事にスルー。
そしてそれをなんの躊躇いもなくできる3人であった。

『黙れ土方コノヤロー。』

「一応確認しとくが俺、上司だかんな。」

『あのですね…。』


「おい。無視かコラ。おいこっち見ろ。何でわざとらしく2人の方しか見ないんだ。」


と、訴えている奴がいるがシカトしようと思います。

「心の声丸聞こえなんだよテメェッッ!!!」


キレた土方が刀の柄に手をかけた。

「ちょ!お前ら…」

『いーけないんだ、いけないんだ!!警察の人はすぐ抜刀とかしちゃいけないんですよぉー』
「土方さん、俺ぁ見損ないやした!まさか部下に手を出すなんてぇ〜俺ぁどうしたらいいかぁ〜」

えーんえーんと棒読みで二人は泣き真似をする。

「総悟っっ!!!いかがわしく聞こえるから止めろっっ!何お前ら!何でそんなに人をバカにする事について巧いんだ!!」


「椿ちゃん、総悟、トシ。さっきっから全く話が進まないぞ…」

やっとの思いで聞いてもらえた近藤だった。すると、3人はしぶしぶといったふうに、もといた場所に座り直した。ただし、約一名は殺気を出しまくってだが。


「で、椿ちゃん。気になる事ってなんだい。」


「いや…大した事じゃ無いんですが…








今日のドラマの再放送を予約するかしないか…どうしたらいいと思いますか?」



ガヒィンと素晴らしく清々しい音がその場に響いた。


『いってぇ!!!』



「お前の話を真面目に聞こうとした俺がバカだった…。」


土方は溜め息をついて椿を冷たい眼差しで見つめた。深刻な顔をしているから何かと思えばこれだ…。しかし椿は、その鋭い視線に負けないようは反論した。


『な…!!!だって『渡る世間は鬼しかいねぇチクショー』の再放送ですよっっ!!!』


「だから何だってんだ!!!仕事に関する話かと思ったらドラマの再放送の話だなんて…阿呆すぎて悲しくなるわ!!!」


『副長は分からないんですかあのドラマの素晴らしさが!!!ピン子の生き様がっっ!!!』



椿は身を乗り出す形で土方に詰め寄り、畳をビシバシ叩きながら力説をする。


「今は仕事中だろうがっっ!!!」


そんな椿を瞳孔が開いた目で土方が睨んだが、流石に1ヶ月間似たような目で見られていれば慣れっこだ。


「あれぇいいんですかぃ土方さん。あんたいつもそのドラマ楽しみに予約してたじゃないですかぃ。」


「バッ…!!!余計なこと言うんじゃねぇ総悟っっ!!!」

途端に、椿の目が据わる。


『あっれぇ〜どうゆうコトですか副長ぉ〜』


今まで散々罵倒してたクセにファンでしたぁなんて済まされるかっっ!!!椿の笑顔が不適な物へ変わった時


「あのぉ…取り込み中に悪いんだか、そろそろここを出ないとマズいのではないでしょうか…」


と、だんだんと語尾が小さくなりながら、そしてかなり腰の引けてる近藤が止めに入る。


3人のは思いが煮え切らないままで、空気はピリピリとしていだがとりあえずその場はお開きになった。



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