自分が何組かわかんない。貼り出しはすでになくなってた。
とりあえず友達を探してみるけど、こーゆうときに限って見つからない。はぁ…、
「上野、」
「ぎゃっ!」
後ろから肩を叩かれ飛び跳ねる。ゆっくり振り向くと、
「お前、完璧不審者だぞ。」
ジャッカルだった。
ジャッカルは去年同じクラスで、テニス部では弦一郎以外で唯一話せる仲。
もしかしたら、学校中でも気を使うことなく話せる唯一の男子かもしれない。弦一郎除く。
「ジャッカルぅー。」
「なんだなんだ、どーした?」
あたしはジャッカルに縋り付いた。ジャッカルはいいやつ。困ったときお願いすれば何でもしてくれる。宿題とか、掃除とか、代返とか。
「お前のクラス?…さぁなぁ。うちのクラスじゃないぜ。」
「そっか…。どーしよ。」
いちいち人のクラスまで知らないよね。知ってる人は神か変態だわ。
「あ、」
ジャッカルは思い出したように声を洩らした。
「柳なら知ってるかも。お前今日朝しゃべってたろ?」
「柳蓮二?テニス部の?」
「ああ。あいつ、人のデータ集めんの趣味だからな。」
なんだ変態のほうか。
待てよ。柳はちょっと気まずい。しゃべってたというか逃げちゃったし。
でもこのままじゃHRまで遅刻して弦一郎にさらに怒られちゃう。
「ジャッカル、一緒についてきて。」
「…はぁ、言うと思った。ま、いいぜ。」
「すんません。柳くん、今日初めてしゃべったばっかで。」
ジャッカルいいやつ。今度ご飯食べに連れてったげる。割り勘で。
柳のクラス、F組に着くと、早くも彼は女子生徒から注目を集めていた。そういや来る途中、ジャッカルもいろんな人からおはようとか言われてた。ジャッカルが、だよ。
…わ、笑っちゃ悪いってば。ププッ。
「柳!」
ジャッカルの呼びかけに一度で気付いた柳は、こっちにやってきた。
「柳、こいつのクラス知らねぇか?」
「…こいつ?」
柳はジャッカルの後ろに隠れていたあたしを覗き込んでくる。あんま見ないでください。
「お前か。確か…、B組だったな。」
「B組だってよ。…って、なんで後ろに隠れんだよ。」
B組…かぁ。ここと階が違うな。
やばい、遅刻するじゃん。
「じゃああたし行くね!ジャッカルと柳くん、どうもね!」
二人に手を振って去っていった。
「なんだぁ?…ったく。わりぃ柳。手間かけた。」
「いや。彼女は人見知りだからな。俺とうまく話せないんだろう。」
「…相変わらず何でも知ってんな。」
「弦一郎から俺たちも彼女の面倒を見るようにと頼まれているからな。データは揃っている。」
「あーそういえば。でも俺らもって、何すりゃいいんだ?」
「さあな。思った通りに行動すればいい。」
「…??」
「お前も早く行かないと遅刻するぞ。」
そんな会話を知る由もなく、責任感の強すぎるパパのせいであたしは今まで避け続けてきたテニス部に深ーく関わるようになる。
柳に言われた通り、B組に向かった。
入った瞬間、今年のクラスは最悪なことにすぐ気付いた。
赤髪に銀髪のコンビ。周りを囲む女子の群れ。目立ちすぎな二人はずいぶんめでたい。
「茜ー!」
「あ、鈴!鈴もB組!?」
「そーだよ!一緒一緒!」
「本当!?やったぁ!」
鈴は去年も同じクラス。ずっと仲良し。
男子はちょっとアレだけど、鈴がいるなら最高だ!
あたしが鈴と手を取り合って喜んでいると、女子のきゃあっという歓声が響いた。
「茜!」
でたでた、お父さん。こいつは登場するときいっつもうるさい。まったく、テニス部はなんでみんなしてこんな目立つのよ。ほんとタレントにでもなれば?
「ちょっと!学校ではでっかい声で名前叫ばないでって言ったでしょ!」
「む。す、すまん。」
「で、なんか用?」
ちょっとしゅんとしてしまった弦一郎、それを冷たい目で見るあたし。本当に年頃の娘とパパみたいだ。隣にいる鈴は必死で笑いを堪えてる。それを見てあたしも笑っちゃいそうなんだけど。甘やかしちゃいけないよ。ここは怒った顔を貫かないと。
「あ、ああ。今日の夕飯なんだが、母がお前の分も作ると言っていた。」
「マジで!?やったぁ!もうカップラーメンきれかけてたんだよね〜!」
「うむ。母もお前の健康面を非常に心配しているぞ。」
「さっすがおばさんっ!どっかのオッサンと違って空気読めるわぁ。」
「…誰のことだ。」
「いえ。」
無責任な親のせいで毎日カップラーメン続きだったあたし。久しぶりにあったかーいお袋料理が食べれるんだわ!お味噌汁が食べたい!
そんな浮かれるあたしに忍び寄る、影。
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