act.9 Bunta

「これとこれとこれと…、」

「これも欠かせねーぜ。」

「じゃこれも必要だね。」

「これも入れねーとバランスが崩れる。」

「…以上?」

「だな。」

「「さぁ、食べよう!」」



俺と千夏は、あの日の約束通りケーキバイキングの店に来ている。
色とりどりのたくさんのケーキを目の前に広げ、満足なのは胃袋だけじゃない。



「いやー、やっぱケーキはバイキングに限るぜ!」

「ねっ!誘ってよかった!」



それはバイキング以上にうれしい言葉。
これはマジでデートだし、赤也にはちょっと悪い気もするけど、今日は楽しませてもらおうか。



「…ん!ブン太、これちょーうまいよ!」

「どれどれ!」



千夏が俺の前に、フォークを差し出すと、俺は迷う事なく、それに飛びついた。



「ほんとだ!マジうまい!」

「でしょでしょ!やっぱうちら、味覚も合うんだね!」



味覚、も。聞き逃さなかったぜ。
味覚もってことは、基本的に合うってことだろい?それはもう、俺もめちゃくちゃそう思う。

恋人じゃないし、千夏がどう思ってんのか知らないし聞けないけど。
俺はこいつのこと、好きなんだと思う。



「お土産もいっぱい買えてよかったね。」



いっぱい食いまくって、そのケーキバイキングの店を後にした。
駅前を通りかかると、ミスドが目に入った。そーいや、ついこないだ、そこのミスドでこいつに出会ったんだっけ。
知り合って間もないっちゃそーだけどな、第一印象から、かなりよかったからなー。
ドーナツとかお菓子類も好きで、気も合うし、可愛くてさ、そんなんで好きになるなってのが無理だろい。

でも逆に、なんで赤也は千夏のこと好きになったんだ?あいつ、40点とか言ってなかったっけ?
まぁ本人から聞いたわけじゃねーけど…、
マジでかぶってたら最悪だな…。



俺がいろんなめんどくせーこと考えてると、千夏が急に俺の服の裾を掴んで引っ張った。いやー、こーゆう仕草に、男は弱いです。



「ねー、ブン太、プリクラ撮ろうよ!」

「お、おお!撮るか!」



たぶん表面上は、平静を装ったけど、
内心、ガッツポーズ。万歳三唱。
俺たちは近くのゲーセンに入っていって、千夏が選んだやつに並んだ。

そーいや、前このゲーセン来たときはこいつはいなかったよな。そんときもプリクラ撮った。人数多かったからぎゅうぎゅうだったけど。
待ってる時間、暇だし、財布からそのときのプリクラを取り出して、千夏に見せた。



「あ、この前のやつか!ふ〜ん…、あははっ、ブン太変な顔!」

「俺、変顔スペシャリストだからな。」

「これも変だね!」

「おい!それは普通に笑顔だろい!」

「おや、失敬!……やっぱり、」

「ん?」



千夏は俺にプリクラを返しながらつぶやいた。



「涼子って、きれいだよね。」



単純に、俺はそのとき、高山への憧れの気持ちだと思った。
高山は男女問わず、きれいだと認めるほどのやつだったから。俺もそう思うし、テニス部のやつもみんなそー言ってる。(真田以外。)

だから、こいつが何を思ってこの言葉を口にしたのか気付かなかったし、ましてやその先にいる、アイツのことなんか頭の片隅にも思い浮かばなかった。



「ほら、ブン太、笑って笑って!」



プリクラ撮るときってほんと季節問わず暑い。まぁ狭いからしょーがねーけど。
それよりも、さっきからすっごい、千夏との距離が近くて、ドキドキする。…このドキドキついでに、やってみるか。

俺は右腕を、千夏の肩に回してさらに引き寄せた。そんとき千夏の顔は恥ずかしくて見れなかったけど。

プリクラには、千夏の最高に可愛い笑顔が写ってた。
俺の、宝物になった。

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