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体育祭前日。各クラス体育の時間や放課後などを活用して、体育祭の準備に励んでいる。それ以外にも授業を休講にしての練習時間もあった。

そして今日は奇しくもその練習時間、I組もB組も同じグラウンドでバトンの受け渡し練習とかしちゃってる。練習の段階から鈍臭さのにじみ出る私は…あんまり浮かれられなかった。丸井くんがそばにいるだけに。情けない姿は見せたくない。丸井くんがそばにいるのに……。


「あれ…」

「どうしたのー真帆」

「…ううん、何でもない!」


それでもやっぱり、ついつい見てしまうB組の集団。丸井くんいるかなぁって、カッコいいだろうなぁって。

でもそのとき、私の目には、赤い髪と銀色の髪の後ろ姿がその集団から離れて、校舎のほうに入って行くのが見えた。

明らかに丸井くんと仁王くん。なんで二人で校舎に。まさかサボり…じゃなくて、二人でトイレとか?二人とも余裕だから特別休憩、とか。


「ほら、次真帆の番だよ!」

「う、うん!」


なんだろう、気になるな。ただ単に休憩だったらいいんだけど。でも他のB組の人たちはみんなあそこにいる。どうして二人だけ。

気になり過ぎて全然練習に身が入らず。うちらの休憩の時間まで、ただただ気掛かりだった。


「じゃあちょっと休憩でー」


体育委員のその言葉を聞き、私は居ても立っても居られず。トイレへと言い残し、校舎内に駆け出した。

まだB組は練習をしてる。今度は男女分かれて男女別の種目の練習だ。あの二人はまだ戻ってなくて、トイレにしたって休憩にしたって遅いと思う。何の確信もないけど、変に心配する気持ちがあった。

…ただ、校舎内と言っても広い。どこなんだろう。


「お、成海」


教室か。はたまた校舎通り越して部室か。どこに行くべきか玄関で迷っていると。
廊下から歩いてきた仁王くんに出くわした。


「仁王くん!」

「休憩か?」

「う、うん、そうなんだけど…」

「?」


仁王くんは今一人だ。丸井くんは見当たらない。
どうしよう。丸井くんどこ?って聞いてもいいのかな。でもそしたら私がずっと見張ってたみたいな感じになっちゃう?どうしよう……。


「いたっ!?」


悩んで躊躇っていると、いきなり仁王くんに頭を叩かれた。スッパーンと。そんなに痛くなかったけど、反射的に頭を押さえ、痛いと叫んでしまった。


「え?頭痛いんか?」

「痛いっていうか…なんでいきなり叩くの!?」

「あーそれはきっと頭痛じゃなー風邪かもなー」

「いやいや、そういうわけじゃ…!」


なに言ってるのこの人!?自分で意味不明な行動をしたくせに、仁王くんは涼しい顔をして、喚く私の横を通り過ぎる。
そして一歩二歩、過ぎたところでこう言った。


「頭痛いんなら保健室にでも行ったほうがいいんじゃないかのーお大事に」


もっと怒りたかったけど。相変わらず優しいのか、意地悪なのか、わからない掴めない人。
考えてて、固まる私はその仁王くんの後ろ姿をしばらく見つめたあと。

振り返り、彼がさっき歩いて来た方向へと、足を進めた。
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