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「ハロウィンパーティー?」


10月も半ばにさしかかった頃。美岬とお昼ご飯を食べていると、ジャッカルくんからその話を聞いた。


「パーティーってほどでもねぇらしいが、当日はお菓子用意しとけってよ」

「誰が?」

「誰がって…主催者だよ」

「だからその主催者って?」

「…うちの部の誰か、だよ」


ジャッカルくんは結局その主催者について教えてくれなかったけど。

彼の言っていたハロウィンパーティーというのは、当日、みんなでお菓子を交換しようっていうものだった。

でもみんなでさぁ交換しよう!というものではなく、各々部室を訪れたり出会った人から、Trick or Treatを合言葉にお菓子をもらう。ハロウィン当日は土曜日で学校はお休み、だから部活のある生徒のみで行うちょっとしたイベントみたい。立海は附属高校にそのまま進学する人が多いし、対外的には引退した3年生も引き続き部活に出てるから、そこそこ人数はいそうだ。


「へー楽しそう!どこに誰が行くかは自由なんでしょ?」

「だと思うぜ。まぁだいたいみんな午前中の練習が終わってから部室棟とか回って、お菓子をもらうって感じだろ」


美岬はすぐにその企画に賛同した。うちの学校はテニス部が名門なせいか、テニス部だけ男女ともに部室は独立してるけど、それ以外の部活には部室棟内の部屋が充てがわれている。そこに野球部だとかサッカー部だとかいろんな部活の部室があるから、たしかにそこを練り歩けばたくさんのお菓子をゲットできそう。ただ…。


「真帆も参加するでしょ?」

「えっ、…う、うん」

「お菓子どうしようかねぇ?手作りって案もいいよね!」

「うーん、そうだね」


たしかにたしかに、楽しそうではある。ただ私としては一つ、懸念が。


「ところで、男子部もみんなお菓子用意するの?」

「まぁな。部長の命れ…いや、何でもない」

「じゃー丸井君とかちょー張り切りそう!もらうのもあげるのも」


そう、美岬の言う通り、お菓子と名のつくイベントなら、丸井くん大活躍の場と言えるだろう。それこそもらうことが楽しみでもあるだろうし、あげるためのお菓子も張り切って手作りを用意するんじゃないかって。

だからこその懸念。いくら丸井くんとはいえ、作れるお菓子の数もある程度決まってるだろうし、当日はテニス部以外にも部活があるわけだから、それはもうきっと争奪戦になる。丸井くんのお菓子がパティシエ顔負けなことは有名だし、おまけにモテるし。

加えて。たとえ私が頑張って手作りを用意したとしても、丸井くんがもらいに来てくれるとは限らない。男テニの部室に一番近いのは、女テニの部室だけど…でも来てくれるとは限らない。

丸井くんの天才的手作りお菓子が他の女子にさらわれる。そして私のお菓子はスルーされ、別の女子からのお菓子をもらっちゃう。…なにそれ、一方通行のバレンタインより悲劇度高いじゃん…!そうなることが怖い。怖すぎる。


「さぁ、そうと決まれば次の休み、お菓子の特訓しよう!」


そんな私の不安は知らず、美岬はめちゃくちゃ張り切ってるし。かっこいいって言ってたE組の人にあげるのかな。それともちょっと疑惑のあった、仁王くん?

いろいろ思うところのあるまま、ハロウィンパーティーまでの日が近づいていった。
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