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そして探すこと10分。なかなか見つからない。
「ないのう。ほんとにゴミ箱に捨てたんか?」
「う、うん。ポイッて」
「ちゃんと入っとった?」
「え?」
「いや、投げたんなら、外れてゴミ箱の横とか裏に落ちたりとか。よくあるじゃろ」
言われてみればそうだ。もう20近いゴミ袋を開いたけど見つかってない。それらしいものは仁王くんに確認されたけど、全部違ったし。
「もう一回教室に確認してくる!」
「のほうがよさそうじゃな」
「ごめんね仁王くん。もうここはいいから。ほんとにありがとう」
「ああ。うまくいったらジュースでもおごって」
「?…うん!もちろん!」
うまくいったら…って、よくわかんないけど。見つけられたらってことか。
「成海」
背を向けて走り出すと、言い忘れたかのように、仁王くんが私を呼び止めた。
「結局、何捨てたんじゃ?」
今さら?そんな言葉が私の頭の中に浮かんだ。それは、探し始めたときじゃなくて終わった今聞くことなの?って、そういう意味じゃない。
「…休み明けの、英語のテスト」
「あーそりゃ捨てる。俺も捨てたぜよ」
「わ、私は初めてだよ!」
「ははっ。そんなもんに書くなって、言ってやりんしゃい」
探す傍ら、仁王くんは私の探し物を知ってるんじゃないかって、薄っすら思ってた。A4とかの件もそうだし、これか?って確認されたものはすべて学校のプリント類ばかりだった。
何より丸井くんと同じクラスだ。 彼が私に教科書を借りたことや、授業中、ノートじゃない紙に何か書いていたことを、知ってたのかも。
走るのは得意じゃないけど、頑張って走った。丸井くんが書いてくれたもの、仁王くんが手伝ってくれたこと、それらを思うと疲れなんて知らない。
…というか、柳くん待たせっぱなし。
「…お待たせ!」
「ああ、5分オーバーだが気にするな」
I組へ行き、そのあと柳くんの待つ空き教室へとさらに走った。もう息が切れ切れ。15分とか言いつつ、20分以上経ってた。申し訳ない!今日はいろんな人に迷惑かけちゃった。
「探し物は見つかったのか?」
「あ、うん!おかげさまで!」
「そうか。こちらもひと通り終わったぞ」
そう言って柳くんは、ノートを差し出した。私がさっき、ゲームチームのミーティング内容をまとめてたノートだ。
「このノートのおかげでそっちの内容はわかった」
「え!」
「ついでにこちらの内容も付け足しておいた。あとで確認してくれ」
「ほんとに!?ありがとう!」
うわーなんてありがたい!おまけになんて達筆!真田くんといい勝負。
そしてそのおかげで、柳くんとのミーティングはたったの数分で済んだ。
迷惑をかけただけでなく、みんな親切。男子テニス部はいい人が多いなぁ。
私もうっかりミスには気をつけて、文化祭の準備頑張らないと!
文化祭。今年はきっと特別なものになる。
丸井くんからの手紙、というかあの答案用紙は、やっぱりゴミ箱の裏にあった(ほんとにごめん仁王くん…!)。
そこには、楽しみな文化祭を、さらに楽しみにさせてくれる言葉が書いてあった。
“海原祭、時間あったら一緒に回らない?”