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文化祭は二日間に渡っての開催で、私は1日目にテニス部の模擬店の当番となった。クラスのほうが2日目。
そして同じく文化祭リーダーである柳くんは1日目がクラスの当番らしく、2日目にテニス部の当番。一応ゲーム、甘味処と責任者としては別れてたけど、お互い当番の日は両方のチームを適度に行き来することに決まった。
この案を出してくれたのは柳くん。成海は頼りになるので両方見てやってくれないか?…なんて言われちゃって、そんな頼りになんかならないけど……。
ただ、個人的にはすごくうれしい。柳くんに褒められたことが、ではなくて。
「えー、じゃ1日目、真帆は出ずっぱりってこと?甘味処とゲーム両方?」
「まぁそうだけど。でも休憩とかはもらえると思うよ」
「ならいいけどさ。丸井くんとのデート時間も作らないとじゃん」
「…デート!?デートじゃないよ!」
「デートじゃんデェト〜」
あからさまにからかう態勢な美岬は、私があの話をしてからずーっと、こんな調子だ。
あの話というのは、もちろん、丸井くんに文化祭を一緒に回ろうと誘われたこと。
時間とかの指定はなかったけど、結局私は丸井くんのいる甘味処も担当することができるわけだ。おまけに丸井くんは1日目が甘味処の当番。そのときに待ち合わせとか、どこに行くかとか、打ち合わせできればと思って。
一緒に回れることも、一緒に模擬店をやれることも、ほんとに楽しみで楽しみで……。
そんな浮かれた気持ちは、文化祭当日になって砕かれた。
当日の朝、早めに登校した私は、柳くんから渡されたプリントを見て硬直する。
「すまないが、一部担当変更が出たらしい」
「……」
「B組に忌引きの欠席者がいるそうでな。B組内での欠員補充やその他調整のため、仁王とブン太のテニス部当番は2日目に変更だ」
嘘でしょ!?…と顔に書いてあったのかもしれない。柳くんにもバレバレだったかもしれない。でもそれを気にかけるよりもショックで、ずっと楽しみにしていたことが一気になくなった気分だ。
「2日目がいいか?お前も」
「え?」
「俺が代わってやれればいいが…、だが俺もお前も、クラス側のこともあるだろうし、難しいか」
「いやいや、いいよ!私はこのまま、1日目で…!」
「そうか」
やっぱり柳くんには何となくわかっちゃったのかな。当番の変更が嫌って。
…でもはっきりとはわかってないよね。カモフラージュ(?)で仁王くんも選択肢にいるわけだし。
一気にやる気が削がれたような気分だけど。でも最後の文化祭だし、しっかりやらなくちゃ。…一応甘味処も行ったほうがいい感じだよね、たぶん。丸井くんはいないけど。
そして定刻通り始まった文化祭。まずは午前中、私はゲームチームからスタート。美岬やジャッカルくん、切原くんも一緒だ。
あの花火大会で私は丸井くんと少し近づけたけど。美岬も美岬で、私以上に男子と近づいた様子。さっきからずーっと切原くんと楽しそうにしゃべってる。
そうそう、しゃべる暇があるぐらい今暇なんだ。海原祭自体はすごく他校から人気なんだけど。飲食店のほうが流行るだろうなーって思った通り、ゲームのこの店はみんな素通り。
甘味処の様子も探ってこようかな、もしくは責任者の特権で退席してB組見に行っちゃったりして、なんて思ってた中。
ふと、変な景品が目に入った。ゲームソフトとかお菓子とかたくさん並んである中、私が見つけたそれは、見た感じただの封筒だった。手紙のような、しかも複数…10個ぐらいある。
「ねぇ、これってなんの景品なんだろ?」
近くにいるジャッカルくんや切原くんに問いかけるも、二人して首を傾げた。
「つーか、それって景品か?単に誰かの忘れ物じゃねーのか?」
「こんなにたくさん?誰のだろ。外側に名前…」
「あーっ!」
封筒をそれぞれぐるっと一周、名前が書いてないか確認していたところ。切原くんがものすごく大きな声で叫んだ。
私もついでに叫びそうだった。切原くんの声に驚いたから…じゃない。
裏に小さく書いてある文字を見つけちゃったんだ。
そしてそれを見てすぐに思った感想は、“さすがだ、彼らしい”。そのアイディアも実際にやっちゃう度胸も…いろんな意味で“彼”はすごい。そう思った。