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結局、というかやっぱり丸井くんは甘味処チームだということを知ったのは、二日後だった。同じチームなら当日はもちろんのこと、それまでの準備期間も一緒だから非常に残念。さっそく今日、各チームでミーティングがあるのに非常に残念…。

でも、そんな残念な気持ちを晴らしてくれることがあった。


「成海、英語の教科書貸してくれってよ」


6時間目が始まる前の休み時間。ジャッカルくんにそう言われた。ふと廊下のほうを見ると、入り口の影に丸井くんがいた。


「…うん!」

「俺持ってねーから」


ジャッカルくんはそう言うけど、今日は午前中に英語があったはず…、でも今日は休み明けテストの返却日だったし、いらないと思って持ってこなかったのかな。

どちらにせよ、丸井くんとまた話すきっかけができたんだ。うれしくて、ドキドキしながら丸井くんのほうに持って行った。

その舞い上がりのせいで、私はある一つの重大なことを忘れていた。


「悪いな、わざわざ」

「ううん、いつでも借りにきて!」

「サンキュー」


クラスも違うし、あまり話す機会がないのは変わらないけど。あの花火大会以来、少し、近づいたような気がする。今だってずっと丸井くんは笑顔を向けててくれたし。

そう、一人満足しながら半分夢心地で、ジャッカルくんや美岬からのニヤついた目も気にはならなかった。

…けど。椅子に座って、次の授業の先生が教室に入った途端。気づいてしまった。


「…あっ!」


その声は、まだ静かになってなかったこの教室内でも、みんなからの視線を集めるには十分だった。


「どうしたの?成海さん」

「…い、いえ、何でもありません!」


不思議そうな顔をした先生や周りのみんな。でも、私が気づいたコトは、誰にも言えるものではなかった。

さっき丸井くんに貸した英語の教科書。それに、今日返されたばかりの休み明けテストの答案を、挟んでいたんだ。

高得点なら全然いい。でも、正直かなり微妙な点数…。いつもは悪くないんだけど、今回は夏休みボケで……!

そのあとの授業は、ほとんど耳に入らなかった。


「ありがとな、教科書」

「いえいえ、どういたしまして…」


放課後、丸井くんはすぐに返しにきてくれた。
ほんとならこれもこれですごくうれしいはずなんだけど。私は恥ずかしくて、情けなくて、あまり丸井くんのほうを見れなかった。


「あー…のさ」


途切れそうな丸井くんの声にようやく顔を上げると、丸井くんには、さっき見せてくれたような笑顔はなく。
なぜか気まずそうな、そんな表情だった。

なぜかじゃないよね。ここに挟まれてる65点の答案見ちゃったからだよね…!


「いいの!気にしないで!」

「…ん?」

「私のうっかりミスだから!いつもこんなもんだし、気にしないで!」


慌てて言う私に、丸井くんは少しぽかんとしている。堂々と微妙な答案を挟んでおきながら、変な言い訳だったかな…。
いや、でも丸井くんはちっとも悪くないわけで。一方的に私が気まずい思いをさせちゃったわけで。

一瞬間を置いて、丸井くんは軽く吹き出して笑った。


「そーいや、俺もちょうど同じだったぜ」

「え?」

「点数」


じゃあなーと、また丸井くんは笑い、廊下を走り出した。

丸井くんと同じ点数、うれしい…じゃなくて。
見られて慌ててたことがバレるなんて、見られたことそのもの以上に恥ずかしい!おまけに変に気を使わせちゃったし!

…でもやっぱり優しいなぁ。私なんかより全然、断然、優しい。テストが微妙だろうがなんだろうが、カッコいいし。

席につけーと、担任の先生がやってきた、その傍ら。
私はとてもきれいに二つ折りされ教科書にそっと挟んであった、この忌々しき答案用紙を静かに丸め、ポイッとゴミ箱に捨てた。…親にも黙っとこう。

とりあえず、今日から文化祭の準備が始まるようなものだし、私もしっかりしないと!
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