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そして何となく元気がないのは私だけじゃなかった。
2回裏が終わってベンチに戻り、最後まで応援しようって、みんなに声をかけようとすると。美岬が俯いてた。
「ごめんね。自分でピッチャーやりたいって言ったのに、打たれちゃって」
これから最後になるかもしれない、3回表。今まで全員凡退してるから、9番バッターの美岬が最後になるかも。
中学最後の球技大会。みんなの前で俯く美岬は、ピッチャーとして、みんなを引っ張ってくれたと思う。クラス全員なんだかふわっとしてて、リーダーシップをとる人がいないうちのクラスでは、すごくありがたい大事な存在なんだ。
「私キャッチャー初めてだったけど、バッテリー組めて楽しかったよ。美岬もほんとカッコよかったもん」
「……」
「今日は終わっちゃっても、またみんなでソフトボールしたいね」
そう言って私は自分のバットを美岬に差し出した。
それを受け取った美岬は、顔を上げて、少し笑顔が戻った。
気を使ったわけじゃない。もちろん美岬のせいでもないわけだし。
頑張ったから。俯く必要はないって思った。
「みんなでするならバスケとかのほうがよくない?」
「えぇ、バスケ!?」
「真帆は体力ないもんねー」
「走り回るのはちょっと…苦手で…!」
お祭り騒ぎのB組と違い、静かになってたI組。そのみんなも、うちらの会話に自然と笑顔になった。
負けてもいい。相手の応援とか団結力がすごいだなんて比べる必要もない。
私は私で、このクラスが好きだから。
「よっし。せっかくだし、みんなで円陣でも組まねぇか?」
向こうよりかはちょっと人数少ないけどよ、そう笑いながらジャッカルくんが言った。
きっと私も他のみんなも、あれいいなぁ、なんて思ってたのかもしれない。人数少ないし、声が特別でかい人もいないけど。
「最後まで頑張るぞー!」
「「「おー!」」」
これでみんなが一つになった。あとで他のチームの試合でも円陣やりたいねーかけ声カッコいいの考えよーなんて、やっぱりみんなふわっとしてるけど。私はこのクラスでよかったと思う。
そしてそのあと。最後のバッターになりそうだった美岬が、なんと執念の内野安打。
「次のバッターは?」
「全部回ったから1番?」
「ってことは…真帆?」
B組の応援すごい、相手ピッチャーすごい、丸井くんが見てる、そんな重圧以上の重圧。
私がアウトになれば試合は終わる。せっかくみんなで円陣組んでいいムードになって、美岬が出塁できたのに…!
私の負のオーラがみんなに伝わったのか、みんなして神様に祈るポーズだったのがちょっと笑えた。