10


そして何となく元気がないのは私だけじゃなかった。
2回裏が終わってベンチに戻り、最後まで応援しようって、みんなに声をかけようとすると。美岬が俯いてた。


「ごめんね。自分でピッチャーやりたいって言ったのに、打たれちゃって」


これから最後になるかもしれない、3回表。今まで全員凡退してるから、9番バッターの美岬が最後になるかも。

中学最後の球技大会。みんなの前で俯く美岬は、ピッチャーとして、みんなを引っ張ってくれたと思う。クラス全員なんだかふわっとしてて、リーダーシップをとる人がいないうちのクラスでは、すごくありがたい大事な存在なんだ。


「私キャッチャー初めてだったけど、バッテリー組めて楽しかったよ。美岬もほんとカッコよかったもん」

「……」

「今日は終わっちゃっても、またみんなでソフトボールしたいね」


そう言って私は自分のバットを美岬に差し出した。
それを受け取った美岬は、顔を上げて、少し笑顔が戻った。

気を使ったわけじゃない。もちろん美岬のせいでもないわけだし。
頑張ったから。俯く必要はないって思った。


「みんなでするならバスケとかのほうがよくない?」

「えぇ、バスケ!?」

「真帆は体力ないもんねー」

「走り回るのはちょっと…苦手で…!」


お祭り騒ぎのB組と違い、静かになってたI組。そのみんなも、うちらの会話に自然と笑顔になった。

負けてもいい。相手の応援とか団結力がすごいだなんて比べる必要もない。
私は私で、このクラスが好きだから。


「よっし。せっかくだし、みんなで円陣でも組まねぇか?」


向こうよりかはちょっと人数少ないけどよ、そう笑いながらジャッカルくんが言った。

きっと私も他のみんなも、あれいいなぁ、なんて思ってたのかもしれない。人数少ないし、声が特別でかい人もいないけど。


「最後まで頑張るぞー!」

「「「おー!」」」


これでみんなが一つになった。あとで他のチームの試合でも円陣やりたいねーかけ声カッコいいの考えよーなんて、やっぱりみんなふわっとしてるけど。私はこのクラスでよかったと思う。

そしてそのあと。最後のバッターになりそうだった美岬が、なんと執念の内野安打。


「次のバッターは?」

「全部回ったから1番?」

「ってことは…真帆?」


B組の応援すごい、相手ピッチャーすごい、丸井くんが見てる、そんな重圧以上の重圧。

私がアウトになれば試合は終わる。せっかくみんなで円陣組んでいいムードになって、美岬が出塁できたのに…!

私の負のオーラがみんなに伝わったのか、みんなして神様に祈るポーズだったのがちょっと笑えた。
Top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -