26


楽しかった夏休みもあっという間に終わり始まった二学期。授業のない夏休みはかなり魅力的だけど、二学期も二学期で楽しみがたくさんある。

まずは9月に行われる文化祭。クラスごとと、希望すれば部活ごとでも出店することができる。
そして部活ごとの模擬店は、最上級生である3年生が主体となる。私も去年は少しのお手伝いだけだったけど、今年はたくさん仕事がありそうだ。


「ってことで、海原祭のテニス部女子リーダーは真帆に決定ね!はい拍手ー」


ほんとに仕事がたくさんありそうだ。昼休みに行った女子テニス部の文化祭ミーティングにて、美岬の推薦により、私が女子テニス部内での文化祭リーダーになってしまった。

真帆は気が利くし、部内はもちろん、風紀委員で先生からの信頼も厚い、さらに合同でやる男子部とのパイプもあるから〜というのが推薦理由だったけど。…最後のはどうなのこれ。


「大丈夫!ちゃんとうちらもサポートするからさ!」

「う、うん…。なんとか頑張るよ」


ほぼほぼ強引に決められちゃったけど。でも決まったからには頑張るしかない。

そしてその日のうちに、男子部のリーダーと打ち合わせをすることになった。男子のリーダーは柳くんだ。
…丸井くんだったらなーなんて思ってただけに、ちょっと残念。

放課後、打ち合わせ場所の空き教室へ向かうと、すでに柳くんは来ていた。


「ごめん、待たせちゃって」

「いや、時間通りだ。さっそく打ち合わせを始めようか」

「うん、よろしく」


模擬店に関して、女子の意見と男子の意見を擦り合わせるのが最初の仕事だ。


「まずは女子から挙がった案を教えてくれ」

「うん。えっと、一番多かったのは食べ物屋さんで…」


たこ焼き屋、焼きそば屋、うどん屋、喫茶店、などなど、女子から挙がった案を出していった。どれも模擬店ではよくあるものだ。


「どうかな?」

「そうだな。模擬店としては無難な線ではあるが、その分ライバルも多い」

「やっぱりそうだよね。バレー部とか体操部もたこ焼きにするって聞いたんだ」

「売り上げランキングのこともある。よほどの工夫をしないと、上位に食い込むことは難しいだろうな」


柳くんは立海に首席で入学して、今現在も成績はトップだ。テニス部内でも“参謀”なんて呼ばれてたりする。その辺りの工夫はお手の物のような気がするけど、そんな彼でも難しいと感じるわけだ。


「男子はどんな意見があった?」

「こちらも飲食店としての案はあった。…が」

「?」

「女子と男子で、ある意味真逆の案だな」


少し笑いながら柳くんが言った案は、甘味処だった。
なるほど、女子は食べ物屋さんでも、どちらかというとがっつり系だ。対して男子は甘味処というかわいらしい案。ほんとに真逆だと、私も笑った。


「でもその甘味処って案、なかなかいいかもしれないね」

「ああ。スイーツ系は他にもあるだろうが、和菓子というのは過去のデータを見てもあまり出店されたことがない」

「そうなんだ。作るの難しいのかな?」

「というより、経験者が洋菓子よりも圧倒的に少ないんだろう。まぁうちにはその手のスペシャリストがいるからな」


フフッと笑いながら柳くんが言ったことの意味は、すぐにピンときた。

きっと丸井くんのことだ。もしかしたら甘味処という案も、丸井くんが出したのかもしれない。丸井くんらしい、かわいらしくて魅力的で、いい意味で普通じゃない。まるで丸井くんの妙技だ。


「じゃあ甘味処にしよう!」

「そうだな、俺も賛成だ」


丸井くんの案かもって気づいた途端、大賛成になった私はかなり単純だな。でも丸井くんが喜んで楽しんでくれたらいいなぁ。
Top
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -