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楽しかった夏休みもあっという間に終わり始まった二学期。授業のない夏休みはかなり魅力的だけど、二学期も二学期で楽しみがたくさんある。
まずは9月に行われる文化祭。クラスごとと、希望すれば部活ごとでも出店することができる。
そして部活ごとの模擬店は、最上級生である3年生が主体となる。私も去年は少しのお手伝いだけだったけど、今年はたくさん仕事がありそうだ。
「ってことで、海原祭のテニス部女子リーダーは真帆に決定ね!はい拍手ー」
ほんとに仕事がたくさんありそうだ。昼休みに行った女子テニス部の文化祭ミーティングにて、美岬の推薦により、私が女子テニス部内での文化祭リーダーになってしまった。
真帆は気が利くし、部内はもちろん、風紀委員で先生からの信頼も厚い、さらに合同でやる男子部とのパイプもあるから〜というのが推薦理由だったけど。…最後のはどうなのこれ。
「大丈夫!ちゃんとうちらもサポートするからさ!」
「う、うん…。なんとか頑張るよ」
ほぼほぼ強引に決められちゃったけど。でも決まったからには頑張るしかない。
そしてその日のうちに、男子部のリーダーと打ち合わせをすることになった。男子のリーダーは柳くんだ。
…丸井くんだったらなーなんて思ってただけに、ちょっと残念。
放課後、打ち合わせ場所の空き教室へ向かうと、すでに柳くんは来ていた。
「ごめん、待たせちゃって」
「いや、時間通りだ。さっそく打ち合わせを始めようか」
「うん、よろしく」
模擬店に関して、女子の意見と男子の意見を擦り合わせるのが最初の仕事だ。
「まずは女子から挙がった案を教えてくれ」
「うん。えっと、一番多かったのは食べ物屋さんで…」
たこ焼き屋、焼きそば屋、うどん屋、喫茶店、などなど、女子から挙がった案を出していった。どれも模擬店ではよくあるものだ。
「どうかな?」
「そうだな。模擬店としては無難な線ではあるが、その分ライバルも多い」
「やっぱりそうだよね。バレー部とか体操部もたこ焼きにするって聞いたんだ」
「売り上げランキングのこともある。よほどの工夫をしないと、上位に食い込むことは難しいだろうな」
柳くんは立海に首席で入学して、今現在も成績はトップだ。テニス部内でも“参謀”なんて呼ばれてたりする。その辺りの工夫はお手の物のような気がするけど、そんな彼でも難しいと感じるわけだ。
「男子はどんな意見があった?」
「こちらも飲食店としての案はあった。…が」
「?」
「女子と男子で、ある意味真逆の案だな」
少し笑いながら柳くんが言った案は、甘味処だった。
なるほど、女子は食べ物屋さんでも、どちらかというとがっつり系だ。対して男子は甘味処というかわいらしい案。ほんとに真逆だと、私も笑った。
「でもその甘味処って案、なかなかいいかもしれないね」
「ああ。スイーツ系は他にもあるだろうが、和菓子というのは過去のデータを見てもあまり出店されたことがない」
「そうなんだ。作るの難しいのかな?」
「というより、経験者が洋菓子よりも圧倒的に少ないんだろう。まぁうちにはその手のスペシャリストがいるからな」
フフッと笑いながら柳くんが言ったことの意味は、すぐにピンときた。
きっと丸井くんのことだ。もしかしたら甘味処という案も、丸井くんが出したのかもしれない。丸井くんらしい、かわいらしくて魅力的で、いい意味で普通じゃない。まるで丸井くんの妙技だ。
「じゃあ甘味処にしよう!」
「そうだな、俺も賛成だ」
丸井くんの案かもって気づいた途端、大賛成になった私はかなり単純だな。でも丸井くんが喜んで楽しんでくれたらいいなぁ。