24
「何味にする?」
しばらくして、私たちもお店の前まで進んだ。丸井くんに聞かれてメニューに目を向けると、定番の味が並んでる。いちご、メロン、レモン、抹茶、練乳、などなど。
「いちごにしようかな」
「おーいいな。俺はー…」
丸井くんもいちごだったらうれしいな。同じ好みということで、お揃いということで。
少し悩んだ様子の丸井くんは、次はもう私たちの番だというときに、口を開いた。
「成海はいちご以外だったら何が好き?」
「え?…えーっと、メロンかなぁ」
「メロンな、オッケー」
前のお客さんが出来上がりを待つ間、出店のスタッフが私たちに注文を聞いてきた。
「いちごとメロン、一個ずつ」
すぐに丸井くんが答えてくれた。いちごとメロン、私が好きな1番目と2番目。
初めて名前を呼ばれたことや、私の2番目を丸井くんが注文してくれた意味を考えて、体がドキドキするようなワクワクするような、そんな感覚だった。
「一緒に食おうぜ」
空は真っ暗だけど、出店の明かりがあってこの辺りは真昼のように明るい。
明るいせいではっきり見える、丸井くんの爽やかな笑顔が、私の心臓を掴んで離さない。
「あ、ありがとう。なんかごめんね、私の好みにしてもらって…」
「いーえ。ほら、てっぺん食え。シロップたっぷりかかってるから」
鮮やかな緑がじんわり染まる氷に、ストローを差し込んだ。さすがふわふわカキ氷と銘打ってるだけあってボリュームもあるし、氷がきめ細かでちょっとした風にも飛んでってしまいそう。慎重に、慎重に…。
「おいしい!」
「おう、そりゃよかった。もっと食っていいぜ」
「ありがとう!…あの、丸井くんも、いちご」
私からそんなことをして、迷惑じゃないか、少し不安が過ぎった。
丸井くんはいちご味が好きじゃないかもしれない、自分のはくれても他人のは食べたくないかもしれない、それらは別に大丈夫だけど、私からというのが嫌かもしれない。
「じゃ、遠慮なく。いただきまーす」
でもほんとにすぐに、丸井くんは私のカキ氷にストローを差した。ちょっと大盛り、でも器用に口に運んで、うまいって言って、また笑顔になった。