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しばらくすると、買い出しに行ったみんなが戻ってきた。焼きそばにたこ焼き、からあげ、ベビーカステラ、ジュース類などなど盛りだくさんだ。
「ありがとう」
「いいえー。そろそろ花火も始まるし、さっそく食べよう!」
美岬がそう言って、みんなで食べ始まると、まもなく花火の打ち上げが始まった。
きれいだねーとか写真撮ったりとか、花火の音に負けないぐらいうちらのエリアも盛り上がった。
来る途中は男女で分かれてたけど、今は少し入り乱れてる。ただ、私から見て丸井くんが一番遠かった。
「ねーねー、男子って、誰か彼女いる人いんの?」
すごいな美岬。この場でしかも男子にそんなことを聞けるなんて。
でも私としても、それは気になる情報。もし丸井くんに彼女がいたら……やばい死んじゃう。
「俺はいないっス!募集中っス!」
「えー、切原くんモテるでしょー?」
「いやいや全然!たまーにラブレターもらうぐらいで」
元気よく答えてくれたけど、…やっぱりラブレターもらったりしてるんだ。人気だもんなテニス部は。
「さーて、次は先輩たちの番っスよ!これを機に教えてくださいよ!」
「切原くんも知らないの?」
「知ってる人もいるっスけど…仁王先輩とか教えてくんないもん、絶対」
「赤也は口軽いからのう」
「すっげー秘密シュシタイプっスよ俺!」
「それ言うなら死守じゃき」
「あははっ、じゃあせっかくだし今日みんなで暴露っちゃおー!」
美岬と切原くん、プラス仁王くんを主軸に会話は進行している。すごいな、やっぱりこういうタイプが合コンとかの幹事向きだわ。私やジャッカルくんには無理なわけだわ。
うんうん、と一人頷いていると、なんだか切原くんからの視線を感じた。
「…え?なに?」
「や、成海先輩は彼氏とかいんのかなーって!」
そう無邪気に笑う切原くん。その切原くんにつられてなのか、みんなが私に注目した。
「い、いないよ!そんな!」
「へぇ、いないんスか〜意外」
「真帆はねー、けっこう影で想いを寄せられてると思うね」
「わかる!そんな感じっスよね!」
「えぇ!?まさかぁ…」
ほんとにまさか、だよ。告白されたこともないし、俗に言うイイカンジ?な人だっていたこともない。
おまけに人気者である丸井くんに片思い中。彼氏ができるなんていつになるのか。
ちらっと丸井くんを盗み見ると…、盗み見れなかった。ばっちり目が合った。
今度こそ、何か話したい。ちょっと遠いけど。切原くんに私のこと優しいやつだって言ってくれてた。たぶん、印象は悪くないはず…何か……。
「じゃあさ、仁王くんとかはどうなのよ?」
“カステラ食べる?”そう聞こうと、手元にあるベビーカステラの袋を掴んだ瞬間、美岬が再び話題を振った。
残念…だけど、“カステラ食べる?”なんて聞かなくてよかった。この流れで不自然にもほどがある。そもそも丸井くんの近くにもカステラはある。危なかった。
「俺もおらんよ。部活で忙しいし」
「ふふふ…こないだ1年生の子に告白されてたのは?」
「げ、見とったんか」
「えー!仁王先輩また告られたんスか!?」
「たまたま通りがかってねー。断って相手が泣いちゃったところまでばっちり」
「…あれな。でも初めて見た子じゃったし、しょうがないじゃろ」
すごい。なんか会話がすごい気がする。やっぱり仁王くんもさぞかしモテるんだろうな。切原くんも、きっとジャッカルくんも。丸井くんなんて下手したら最たるものじゃないか。
あれ、そういえば、美岬も隣のクラスの男子に告白されたことあったな。あっちゃんもみーちゃんもあったような。
…何もないの、私だけだねこれ?
ちょっと悲しくなりつつ、でもやっぱり丸井くんが今私は好きだから。誰に告白されても、意味ないだろうなと、自己完結した。