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「ごめん、なんか余計だったかなぁ」


みんなを見送ったあと、切原くんと場所取りに向かった。その途中、不安でいっぱいで、そう聞いてみた。

親しくはなかったけど、後輩だし。同級生の男子よりかはいくらか、話しやすい。


「いやいや!全然だいじょぶっス!」

「そう?」

「いやほんと、ありがたいっスよ!俺後輩一人だし、いっつもこんな役回りで。横暴なんスよ、あの人ら」


話しやすいのは後輩ってだけじゃなく、切原くんの性格もあるんだろうな。明るくてとっつきやすい。


「この辺でいいっスかね?」

「そうだね、ここならみんな座れるし…あ、そうだ」


わりといい場所を見つけることができた。8人という大所帯だけど、みんな入りそう。

そこで、鞄からレジャーシートを取り出した。私がここに残ったのは切原くんがかわいそうっていうこともあったけど、このシートを持っていたから、ということもあった。女子は何人かわからなかったけど、念のため大きめのものを。


「お、スゲー!準備いいっスね!」

「みんな部活後で疲れてるだろうし、座りたいかなと思ってね」

「さっすが!丸井先輩の言ってた通り!」

「…え?」


切原くんは聞き捨てならないことを言った、今。びっくりした私の顔を見て、自分の発言に気づいたんだろう、慌てて口を押さえてた。

…丸井くんが何か、言ってた?


「あの、今のはどういう?」

「いやいや!たいしたことじゃないっスよ!」

「気になる。教えて!」


先輩後輩という立場はこういうときでも役に立つ。詰め寄ると、観念した切原くんは素直に教えてくれた。


「そのー…、成海先輩は優しいやつだって、丸井先輩が言ってたんスよ」

「丸井くんが?なんで?」

「さぁ?なんか、丸井先輩の世話でも焼いたんじゃないっスか?」


あの人けっこー問題児だし〜と切原くんは笑ったけど、切原くんもけっこう問題児な気がする。

私のこと、優しいやつだって言ってたって。前に教科書貸したから?でもその後は借りに来てないし、ほんとは迷惑だったかもしれない。じゃあ球技大会でのジャッカルくんの件?でもあれは、私よりずっと丸井くんのほうが優しかった。私にアドバイスもくれた。

じゃあ…って考えると、他にも一つだけ、思い浮かんだことがある。私が丸井くんに対してしたこと。
でもそれを丸井くんは知らないと思ってた。ただ今は、もしかしたら、そのときのことも言ってるのかもしれないと思った。
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