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会場までの道はやっぱり男子と女子とで少し距離はあったけど、いざ会場に着くと人の多さもあって、徐々に男女別の塊はほぐれてきた。いい流れだ。
「えーっと、成海先輩?なんか食いたいもんないっスか?」
花火が始まるまでみんなでどこから回ろうか、なんて話していると、切原くんにそう聞かれた。
女子のリーダーだし、優先的に聞いてくれたのかな。ありがたいような…でも。
「私は何でもいいよ。みんなが行きたいところで」
そう言うと切原くんは、うーんって顔で、男子メンバーの顔を見渡した。
いや、見渡した、というよりかは、その目線は明らかに丸井くんに向かってるようだった。
「俺も別に、何でも」
切原くんの視線に気づいた丸井くんは、小さめな声ですぐにそう答えた。やっぱり大人しい、ような…。食べること大好きな丸井くんにしては珍しい発言だし。
対して仁王くんやジャッカルくんは、少し笑ってる。
「じゃ、手分けするってことでどうじゃ。2、3人に分かれて適当に食いもん買って、あの辺でみんなで食う」
そう言って仁王くんが指差した先には、花火を見るために座って場所取りをしている人たちがたくさんいた。
「そっスね!でも誰か場所取りしてたほうがいいっスよね」
「そこは後輩の役目じゃき、よろしく」
「ええ!俺一人!?」
この場に後輩一人、というのは何とも不利だ。きっと普段からそうなんだろうな。不満そうな切原くんだけど、先輩には逆らえないんだ。
「あの、それなら私も一緒に場所取りするよ」
切原くんがかわいそうな気もして手を挙げた。手分けするといっても、全部で8人もいるんだ。私が場所取りに回っても問題ないだろう。
問題ない、はずなんだけど。
「え」
親しくはなかったけど、切原くんも喜んでくれると思った。でも切原くんは少し顔を引きつらせて、困ってるようだった。
「それはー…ありがたいんスけど」
ちらっと、切原くんはまた男子メンバーを見渡した。また、丸井くんに視線が向かってるように見える。
「それでいんじゃね」
さっきと同じように、また丸井くんは小さめな声ですぐにそう答えた。切原くんも、そうっスか…と、つられたかのように小さな声で呟いた。
どことなく不穏な空気。断ち切るように仁王くんが、じゃー行ってくるぜよと、歩き出した。
…余計なことしちゃったのかもしれない。