05


そして次の月曜日。先週と同じように真田くんやその他の風紀委員と校門へ立った。

今日は雨で、色とりどりの傘を見送りながら、ただ一人を待つこの時間。いつもと変わりばえはないけど、みんな傘を差しているからか、真田くんの目敏さがあまり発揮できていない。


「よう」


それは私もだった。私も、傘で視界が遮られてて、丸井くんがすぐそこにいるなんて気づかなかった。時間もいつもより早かったし。

丸井くん一人。ジャッカルくんは一緒じゃなかった。


「…あ、おはよう!」

「これ」


それでもやっぱり真田くんに見つからないようにか声はものすごく小さくて、雨のせいもあって聞き取りづらい。
丸井くんは手に持っている袋を差し出した。


「英語の教科書。返すの遅くなってごめん」

「…あ!いえいえ!大丈夫!」


そういえばまだ返してもらってなくて、それなら私がB組に行こう、それでまた話せる、なんて楽しみに思ってた。袋を受け取ると、これまた小さな声で丸井くんは言った。


「嫌だったらいいから」

「?」


嫌だったら…ってなんだろう、不思議に思っていると、丸井くんはじゃあなと言って校舎へ向かってしまった。

その後教室で袋から教科書を取り出すと、何かが挟んであった。4つに折られたメモに、一字一字丁寧に書かれてある。


“ありがとう。また貸してくれ。”


教科書を借りるのは、その日うっかり忘れてしまったから、というのが普通だろう。なのに丸井くんは貸してくれと予告。

丸井くんらしいのと、わざわざこんなお礼の手紙まで書いてくれるなんて、すごくうれしかった。ドキドキと顔の緩みが止まらない。

ただのメモだけど、丸井くんにとっても一応のお礼ってだけかもしれないけど。大事に大事に取っておこうと思った。


これが私の一週間。ささやかだけど楽しみがいっぱい詰まってる。
丸井くんとほんの少しだけ近づき、これからもうちょっと近づいていけたら…なんて思った、欲張りな一週間だった。
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