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そして花火大会当日。やっぱり女子部では部活終了後に美岬や、他にも仲が良いあっちゃん、みーちゃんとで行こうかという話が持ち上がった。
私は、約束があるんだけど……。
「えー!真帆、ジャッカルくんに誘われたの!?」
「いやいや、ジャッカルくんっていうか、男子部が行くからって…」
「マジで!?ジャッカルくんって真帆のこと好きなの!?いいなー!」
「マジかー!すごーい!」
何がすごいって、この男子部の人気っぷり。ちょっとこの手の話が出ただけで、ものすごい羨望の眼差しが注がれる。…ジャッカルくんにそんな気はないはずだけど。
「デートかぁ、うらやましいー」
「いやいや、デートじゃないよ。ジャッカルくん以外も何人かいるんだって」
「へぇ。ってことは、丸井くんとか仁王くんとか?」
「仁王くんは来るっぽかったよ」
「あれ?でも真帆は、丸井くん推しなわけじゃん?」
丸井くん推し、それは確かにそう。推しなんて言うレベル通り越して普通に好きなんだけど。
「まさかの三角関係!?」
「うわ、おもしろそう!」
「うちらも行こう行こう!」
こんな感じに盛り上がってしまったので、私に止める術はなく。
すぐにジャッカルくんに連絡をすると、“みんな一緒でいんじゃねぇか?”というなんとも事なかれ的な返事が返ってきた。
待ち合わせ場所に向かうと、男子部の面々はすでに来ていた。ジャッカルくん、仁王くん、後輩の切原くん。
そして、丸井くん。
あー丸井くんがいる、よかったーなんて思いつつ。女子はうちら以外いなくて、なんだか嫌な予感。
「お待たせ」
「おう、お疲れ」
「ジャッカルくん、他の人は?」
「ん?これで全員だぜ」
…ああ、やっぱりね。ん?じゃないよ、ジャッカルくん。こっちも複数で来てよかったよ。男子部の中に私一人だったら浮きまくりだったじゃん。
ふと周りを見渡すと、なんとなく気まずい空気。私と美岬とジャッカルくんは同じクラスだけど。その他は同じテニス部とはいえ、女子と男子でほとんど絡みはなかったんだ。
女子サイドは、私とジャッカルくんとの会話をにやけつつ遠巻きに見てるし。男子サイドは、本来はテニスプレーヤーとしてエリートだけど、知らない人からすればどこからどう見ても不良少年たち。
「…えっと、それじゃあさっそく、ね?ジャッカルくん?」
「お、おう。行くか」
合コンなんて行ったことないけど、きっと合コンの幹事はこんな立場なんだろうな。私にはできそうもない。
歩いて会場に向かう途中、とりあえず自己紹介を軽くすることになった。ジャッカルくんが提案したからだ。合コン作法でも学んできたのかね。
一人ずつ名前を言っていき(だいたいみんなわかってるけどね)、男子の最後。
「B組の丸井ブン太。シクヨロ」
いつもより少し大人しめな声の丸井くん。暑いから元気ないのかな。
じーっと、ではないけど、少し丸井くんのことを見ていたら、目が合ってしまった。
どうしよう…逸らすのも変だし、かと言って何か話せることもないし…。
「……」
丸井くんの口が、何か言いかけるように開いた。もしかしたら私も、同じように口が半開きだったかもしれない。
でもお互い結局何も言わず。
代わりに丸井くんは、軽く頭を下げて、ニコッと笑ってくれた。つられて慌てて、私も会釈した。
「真帆〜」
すぐ隣にいた美岬に、ツンツンと肘で突かれた。以下小声。
「プラチナペアに好かれるとは、やるねお主」
「好かれ…!?そんなんじゃないよ!…ていうか、プラチナペアって何?」
「丸井くんとジャッカルくんのダブルス、影でそう呼ばれてんのよ」
「…へぇー、プラチナかぁ」
丸井くんが好きなのに、恥ずかしながら初めて聞いたその名前。
でも、プラチナというのはなんだか納得だ。プラチナの指輪だとかアクセサリーは丈夫で、一生ものだと聞いたことがある。
純粋な白い永遠の輝きを放つプラチナ。丸井くんにぴったりだ。