葵とも屋上でよく会った。
鍵は葵しか持っとらんかったけど、何となくあいつがサボりそうな時間に合わせて屋上に向かった。
特に理由はないが、あいつといるとかなり楽だった。
最近部活はつまらんし。クラスも別に。彼女もおらんし。逆に近寄ってくる女は増えるばかり。
屋上にいけば、あいつとバカみたいに身のない会話して。空見上げて。寒がって。ちょっと日が温かったら昼寝して。
それに、癒された。
ある日いつもみたく屋上に行ったら、葵は、シャボン玉を吹いとった。
「何じゃそれ。」
「シャボン玉。」
それぐらいわかる。
何でこんなとこで吹いとるんかって。
「夏休みにお祭りで買ったの。なんか余ってたから。」
お祭り…。
そういや、俺もくじ引きかなんかで当たって部屋に置いてあるな。実際、そんなの使わんし。
「それがさぁ、」
「?」
「吹いてみると意外と楽しくて!あたしシャボン玉得意かも!」
「シャボン玉得意って意味わからん。」
「唯一の特技シャボン玉!」
あははーって。またバカみたいに笑った。
年上にバカバカ言ったら失礼だが、実際バカじゃ、こいつ。かわいそうに。
勉強もろくにできんし、運動神経も悪いらしいし。部活も入ってない。友達といるのもあんま見たことなか。
うちは高校、普通の成績やったら進学できるけど。
…普通じゃない成績な気がする。
「葵、」
「ふふー?」
シャボン玉吹きながら返事すんな。
「お前勉強しとるん?」
「…じゃっかん。」
「嘘じゃろ。」
ばれちゃった?あははー、じゃないじゃろ。
本気でやらんとヤバイぜよ、こいつ。
「葵。」
「なんじゃなんじゃ?」
「日曜ひま?」
初めて、俺から誘った。いわゆるデート。
言っても、ただの勉強会じゃけど。俺が教えられんのは限られとるけど、こいつはその部分も危ういと察した。
バカな子ほど可愛いってやつ。
なんか手伝ってやれんかなって、思った。
部活もつまらん。彼女もおらん。
暇潰しぐらいにしか考えとらんかったかも。
でも、地味に着ていく服を選んどる自分がキモかった。
あいつは、何着てくるんじゃろ。
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