05 得意科目シャボン玉

ガヤガヤうるさい場所は大嫌いじゃ。だから、静かな屋上、みんなの声が遠くにしか聞こえない屋上は、俺にとってベストスポットになった。

葵とも屋上でよく会った。

鍵は葵しか持っとらんかったけど、何となくあいつがサボりそうな時間に合わせて屋上に向かった。

特に理由はないが、あいつといるとかなり楽だった。
最近部活はつまらんし。クラスも別に。彼女もおらんし。逆に近寄ってくる女は増えるばかり。

屋上にいけば、あいつとバカみたいに身のない会話して。空見上げて。寒がって。ちょっと日が温かったら昼寝して。

それに、癒された。



ある日いつもみたく屋上に行ったら、葵は、シャボン玉を吹いとった。



「何じゃそれ。」

「シャボン玉。」



それぐらいわかる。
何でこんなとこで吹いとるんかって。



「夏休みにお祭りで買ったの。なんか余ってたから。」



お祭り…。

そういや、俺もくじ引きかなんかで当たって部屋に置いてあるな。実際、そんなの使わんし。



「それがさぁ、」

「?」

「吹いてみると意外と楽しくて!あたしシャボン玉得意かも!」

「シャボン玉得意って意味わからん。」

「唯一の特技シャボン玉!」



あははーって。またバカみたいに笑った。

年上にバカバカ言ったら失礼だが、実際バカじゃ、こいつ。かわいそうに。

勉強もろくにできんし、運動神経も悪いらしいし。部活も入ってない。友達といるのもあんま見たことなか。

うちは高校、普通の成績やったら進学できるけど。

…普通じゃない成績な気がする。



「葵、」

「ふふー?」



シャボン玉吹きながら返事すんな。



「お前勉強しとるん?」

「…じゃっかん。」

「嘘じゃろ。」



ばれちゃった?あははー、じゃないじゃろ。

本気でやらんとヤバイぜよ、こいつ。



「葵。」

「なんじゃなんじゃ?」

「日曜ひま?」



初めて、俺から誘った。いわゆるデート。

言っても、ただの勉強会じゃけど。俺が教えられんのは限られとるけど、こいつはその部分も危ういと察した。

バカな子ほど可愛いってやつ。
なんか手伝ってやれんかなって、思った。

部活もつまらん。彼女もおらん。

暇潰しぐらいにしか考えとらんかったかも。

でも、地味に着ていく服を選んどる自分がキモかった。
あいつは、何着てくるんじゃろ。

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