02 そういう考え方

「仁王!たるんどる!」



ばちーんと、音が校庭中に響く。

この制裁、代々続いてんだか知らんが、俺は大嫌いじゃ。親にも殴られたことなか。

いつかこいつのこと、一発殴っちゃる。そう、試合で勝つ以外の目標もできた。



「しばらくボール拾いだな。」



参謀。こいつも部長や副部長でもないくせにえらそうにしやがって。

ただ、真田とは違ってそれ以上に教わることもある気がするんで、黙って従う。



ボール拾いは始めると意外とおもろかった。

最近、ちょっと部活がつまらんかった。レギュラーになれたはいいが、元々レギュラーだったやつからのプレッシャーとか、意外と刺々しいレギュラー練習とか。そもそもレギュラーメンバーがはっきり言ってあんま好きじゃない。

真田はあんなんじゃし、柳は小言がうるさいし、丸井は見るからに目立ちたがり屋じゃし、部長は…あんましゃべったことないが。ジャッカルは宿題係じゃな。

まぁたまには気晴らしになるかもな。ボール拾い。いろんなとこに転がってるボールを、リズムよくひょいひょい拾う。



「…あれー?」



下を向いてたら、どっかで聞き覚えのある声が響いた。

顔を上げて、俺は顔をしかめる。

…誰だっけ。



「柳生君!」



いや、違いますって言いそうになったけど堪えた。同時に思い出した。

あのときの、3年。



「なになにー、ボール拾い?」

「…そうっす。」



見てわかんだろ。

ついでに、レギュラーなのにボール拾いさせられてるその意味もわかんだろ。真っ赤な頬っぺたも。



「えらい!」



肩をバシンと叩かれた。
なにがえらいんじゃ。かっこ悪いじゃろが。



「ボール拾いは練習の基本だからね。スピード上げればフットワークにもなるし、いろんなボールにいっぱい触ることも大事だし、」

「……。」

「何より、そーゆう雑用を自らやろうって心意気が素晴らしい!」



ぽんぽんと、今度は優しく背中を叩いた。



「いいプレイヤーになるよ、柳生君。」



そう言って、去っていった。

ボール拾いは自分から始めたわけじゃないし、俺の名前は柳生じゃなか。

でも何故か、心に響いた。

いろいろ、息詰まってた俺の心に。



それから俺は、ボール拾いを積極的にやるようになった。

同時進行で、あの3年の正体も気になった。

名前も知らんし。
部活も知らん。

またどっかで急に現れるんかな。

|
[戻る]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -