異世界見聞録

 突然なぜか異世界トリップってしまった私だが、いい人に会えたという点においてはなかなかに運がいいと思う。家主アディは多少の難はあるが、優しくて親しみやすい。
 初めてアディと一緒に迎える休日。日用品調達ついでに見聞を広めるため、繁華街に出ることになった。
 この世界、少なくともこの街にはもちろんスーパーなんてものはない。商店街というか屋台というか、そんな感じだ。ちまちまこまこま。このごみごみした感じは結構好きだ。あ、猫。
 多分、ここはドイツに近いんじゃないだろうか。行ったことないからただのイメージ、というかむしろ偏見なのだが。全体的に人がデカい。みんな170以上はある。ちなみにアディは180以上だそうだ。私、小人になった気分。しかし幸いにも、白人ばかりということはなかった。黄色人種も結構多い。黒や褐色も。ただし、やっぱりデカい。だから私はただ小人になった気分だけで済むんだと思う。
 まずは日用品を買う。カップ、歯ブラシ、洋服、下着(ためらいなく女性用の店に入ったアディ)、筆記用具も買わせてもらった。シャーペンが恋しい。途中見つけたクマのぬいぐるみに二人で一目惚れして、色違いを二つ買った時には、店員のお姉さん(ボイン)に「兄妹でお揃いなんて、ステキね」って言われた。うん。親子じゃなくてよかった。
 そして食材。これが一番困った。いや、文字はなぜだか読めるのだが、そこに書いてある内容が問題なのだ。具体例。ニンジンらしきものはパセリ。レタスとキャベツが逆。リンゴは野菜。トマトは果物。トッポはポッキーで、ポッキーはプリッツで、プリッツはトッポ。わけわかめ意味とろろ昆布。一番吹き出しそうになったのはこれ。じゃが芋がジャワ芋。書き間違いなんじゃないかと思ったが、おばちゃn奥さんが普通にジャワ芋、って読んでたから間違いない。ジャワ。どこの国だっけ。
「ねえアディ。ジャワ芋ってそのうちなまってじゃが芋になったり……あれ」
 アディがいない。
 やばい。私アディがいなかったら何もできない。巨人の国の小人は周りを見渡しても、ジャンプしても何にも見えない。やばいやばいやばい。私迷子なった。
 ならば、ここは迷子の鉄則。
(動かない!)
 通路の邪魔にならないように、ちょっとはしに避け、アディが来るのを待つ。荷物はほとんどアディが持ってくれてて、私が持っているのはさっき買ったクマさんだけ。これを抱えて立ってたら、巨人さん達からすれば親を待つ子供に見えるはず。多分。

「大丈夫かい、お嬢さん」
 しばらくして話しかけられた。見ると、若手の兵士っぽい。警察的なポジションの人かな。
「迷子かい?お母さんは?」
 よしよし。「親を待つ子供」作戦成功中。でもここで迷子って言っちゃダメだと思う。なんでって、待ってるのアディだもん。アディ、ちょっと見つかったらやばい人なの。居候の身で家主に迷惑をかけるべきじゃないだろう。無邪気な幼女を装えば騙されてくれるだろうか、兵士さん。
「うん、だいj」
「いた!」
 聞きなれた声。アディ、最悪のタイミングでご登場。
「もう、探したよ!って、あれ、」
 アディは今更兵士さんの存在に気づいたらしい。
「…探したぞアディ!おとなしく捕まれ!」
「うわっ!ごめんちょっと走って!」
「せっかく私が気遣って帰ってもらおうとしたところに!」
「おい待て!」
「失礼、おぶるよ!」
「ふぅわっ!ちょ、あんた荷物は?!」
「一回家帰ったの。リトいるかなって」
「帰り道知らないよ!」
「待てと言っているだろ!」
「もう勘弁してよミールさん!」
「知り合い?!」



 感想:アディ足速い超速い。

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