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 その後、創始様と南は、二人だけで皇居裏の社にむかった。そこで何があったかは詳しく知らないが、白廉が帰ってきた、ということだけは事実としてわかる。
 白廉の話によると、渡された鍵で社の中に入った時、何か炎のようなものが見えたらしい。とっさに身の危険を感じた白廉は、まとわりつくそれから逃げ抗い、長時間に渡る争いの結果とりつかれてしまったそうだ。しかしその後も抵抗を続けていたから白廉としての意識は朧けながらも保っていたと言い、だから事情はわかっている、説明は不要だ、と疲れた顔で自室に引っ込んでしまった。
 それから夜遅くまで、私は創始様が来たその後片付けと今日の記録。小娘は立派に演じた白波から南に戻り、スマホの充電がないー!などと騒がしく、他の者も後処理に追われていた。
 しかし、この騒ぎもじき収まる。この日本の月夜とは違うイセンの月の無い夜が開ければ、日本の再現では無いイセンの前進が始まるだろう。

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