ぱん!2!(154533)/1111 memo
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▼参加ランクZERO/Fate腐
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拝啓、恋した君

※言切同棲








綺礼と決めた今日の食事当番は僕だ。アパートの近くのスーパーで材料を買おうとそこへ向かう。
久しぶりに麻婆豆腐でも作ってやろうかな、と綺礼の顔を思い浮かべながら材料を買い物かごに放り込んでいく。

「切嗣?」

後ろからかけられた声に、なんとなく聞き覚えがあった。振り返るとそこにいたのはぴょこんと飛び出したアホ毛が特徴的な、金髪の少女。異国人らしく、名前はアルトリア。少女といっても普段から男物の服を着ているため、少年に間違えられることも少なくないらしい。しかし今はそんなことはどうでもいい。
僕はこの少女が苦手だ。目的のためなら犠牲も気にしない僕に対し、彼女は犠牲などあるべきではないと言う。綺麗事、というべきか。卑怯な手が極端に嫌いらしい。そのためか僕にたまに絡んできては人生とはなんたるかを説教しようとするのだ。彼女はいいことをしているつもりなのだろうが、こちらにとっては迷惑極まりない。
彼女を一瞥し、無視して会計へ向かう。それに気付いて彼女は僕の後について切嗣、切嗣とひたすら名を呼んでいた。会計の店員に訝しげに見つめられながらも、彼女を無視しアパートへの道を進む。

「切嗣、話を聞いてください切嗣!」
「……」

まさか、アパートの前までくるとは。なんとか部屋に入ったが部屋の外から大声が聞こえる。頭が痛い。しかしこのままでは近所から苦情が来てしまう。巧い言い訳を考える暇もなさそうだ。仕方なくチェーンを外し、鍵を開ける。その音が聞こえたのか、扉が開いてアルトリアが入ってきた。ご丁寧に靴を揃え、ご丁寧にお邪魔します、と礼をして。お邪魔だと思うなら帰れ。

リビングに上がらせ、飲み物を入れると言って台所へ逃げた。冷蔵庫から麦茶を出しながら、どうやってアルトリアを帰らせるか考える。前に聞いたが、アルトリアの家はこの近くらしいから追い出しても大丈夫だ、たぶん。

「…切嗣?」
「うわっ」
「飲み物を取りに行くと言って中々戻ってこないから心配になったのですが…何かありましたか」

リビングからアルトリアがひょいと顔を出す。それに驚いて後ずさった。アルトリアは本当に心配していたらしく、僕の顔を伺っている。

「きり、つぐ」
「…アルトリア?」
「切嗣、私は――」

アルトリアが真っ直ぐに私を見つめてくる。綺麗な瞳だ。何の曇りもない。
アルトリアの小さな手が僕の頬を滑る。無精髭がちくちくするだろうに、まるで気にしていない。両手で頬を掴むように引き寄せられて、いつのまにかアルトリアの顔が正面に迫っていた。

「残念だが、衛宮に手を出すのは困るな」
「………!」
「綺礼…」

僕とアルトリアの顔の間に挟まれた手の主は綺礼だった。綺礼はアルトリアを一睨みし、僕の腰に手を回してアルトリアから離した。アルトリアは一瞬不服そうな顔をしたかと思うと、身を翻して玄関へ向かう。

「言峰綺礼、私は貴方が嫌いです」
「私もだ」

その一言、会話を交わすとアルトリアは扉を開けて出ていってしまった。そういえばあいつは綺礼を嫌っていたような記憶がある。顔を見ただけで帰るのだからよっぽどだろう。

「…衛宮、あの女となにをしていた」
「え、別に…顔をわしづかみにされたけど」
「切嗣」
「……っ」

切嗣、と綺礼が呼ぶのは情事の最中だけだ。妙な感じが背中をぞくりと駆け抜けた。

「昨日の夜を思い出したか」
「…別に」

顔を覗き込んでくる綺礼から顔を逸らすと、上からクスクスと笑い声が聞こえる。何がそんなにおかしいんだ、と反論しようとすると、身体がふわりと宙に浮いた。

「ちょ、綺礼…っ」
「本当に可愛いな、お前は」

僕をお姫様抱っこした綺礼は寝室への道をどんどん進んでいく。まさか今からヤる、とか言うんじゃないだろうな。まだ夕方だ、夕食の準備さえ出来ていないし。

「嫌か?」
「いやだって昨日ヤったし……」
「満更でもないだろう」
「…………馬鹿」
「…そうだな、切嗣馬鹿だ」
「クサい」






リクエストいただきました言切←セイバーです。セイバーは真名表記にさせていただきました。
リクエストいただいたセナ様のみご自由にどうぞ!



20120314

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