ぱん!2!(154542)/1111 memo
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04 一人、また一人と減る知人、私の顔を見て悲鳴を上げる者数人




昨日は中々寝付けなかった。そのおかげでベルベットのレポートを徹夜でチェック出来たが。気がつけばカーテンの隙間から朝日が差し込み部屋を照らしていた。
今更重くなってきた目蓋を必死に抑えながら、キッチンのコーヒーメーカーのスイッチを押す。コポコポと音を立てるコーヒーメーカーを尻目に、ゆっくりと部屋を見回した。
――見たところ変わった様子は、ない。昨日帰宅したままの状態だ。何だか疑心暗鬼になりつつある。最近おかしいことが立て続けに起こって疲れているんだろうか。…悩んでいても仕方がない。大学には行かなくてならないし。
疲れを振り払うようにいつのまにか出来ていたコーヒーカップに注ぎ、飲み干した。


ベルベットに渡すために朝から姿を探しているはいいが、中々見つからない。もしかしたら今日は講義がなかったのか、と探すのを諦めかけていた。二限が終わった頃、廊下を歩いていると前をベルベットが通りすぎる。こちらには気づいていないようだ。

「ベルベット」
「っえ、あ、衛宮教授…!」

後ろから声をかけると、ベルベットは大きく肩を震わせてこちらを振り返った。そして僕の顔を見るなり怯えたような目を向ける。
特に何をしたでもないはずだが、ベルベットは酷く僕に怯えているらしい。昨日はこんなことなかったのに。

「レポートの件、なんだけど…何かあった?」
「い、いえなんでも、なんでもないです、ありがとうございます…っ」

ベルベットのレポートを差し出し、ふいに手が当たる。その途端大きくベルベットの肩が震える。見れば必死に僕と目を合わせないようにしているらしい。
ベルベットは何かから逃げるように勢いよく礼をして身を翻し走っていった。あのベルベットが、僕のことを慕ってくれていたベルベットが一体どうしたのだろうか。
違和感が身体を包む。最近の変な出来事と関連があるのか。
あまり深く考えないようにして次の講義へ足を進めた。



「――戻れない?」
「そうなの、空港でストライキが起こって…しばらくは収まりそうにないわ」

それからベルベットの態度は変わらずだったが、いつも通りの日々を過ごしていた。ベルベットの態度が変わって以来、変な出来事は起こらなくなった。ようやく明日、妻と娘が帰ってくるというとき、妻から帰れないという電話がかかってきたのだ。

「――そうか、じゃあ何かあったら連絡してきてくれ。すぐ行く」
「もう、空港が使えないから来れないのよ…切嗣」
「ああ…そうだったな、アイリ」

自然と笑みが浮かんで、幸せな気分になる。今すぐ愛する人を抱きしめたくて、抱きしめたくて仕方ない。変な出来事を報告して慰めてほしかったが、アイリに無駄な心配をさせたくはなかった。

「帰れるようになったら連絡してくれ」
「わかったわ。それじゃ、じゃあね」
「ああ、イリヤにもよろしく」

向こうから切られた電話。受話器をしばし眺めて息をつく。
ふいに部屋を見回し、何の変化もないことに安心感を覚えた。これが普通のはずなのに。
いつまでも考え込んでいても仕方ない。夕食の準備でもしようと冷蔵庫を開くと、あまり大したものが入っていなかった。適当にコンビニで弁当でも買おう。そう思い、鍵をかけて家を出た。

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