8.
でも今日は違った。
気が付いた時には顎に手が添えられ、
強引に上げられていた。
「剣人さっ……」
視界からスクリーンが消えた。
暗闇の中で唇に柔らかいものが触れた。
それがキスだと気付いたと同時に、
目を閉じるのを忘れた事に気が付いた。
全身に緊張が走り、動けなくなるヒカル。
少しずつ食むように動く剣人の唇には気付いていたが、
思考が追いつかない。
ようやく目を閉じた時は唇から感触は消えていた。
「ヒカル……?」
肩を強張らせ目を固く閉じるヒカルの頬を、
剣人はその大きな掌で包んだ。
「っ……!」
「大丈夫か?」
大きく目を見開いた時。
スクリーンにはエンドロールが流れ始めていた。
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