2.

カタンッ

出入り口のドア辺りで何か音がした。



ヒカルはポットを火から外し、ドアの方を眺める。

「……あ」

人影が見えた。

開店には少しだけ早い時間だ。

でもお客様が来てくれているのだから、
もう開けてしまおう。

鍵を開け、ドアを開いた。

「……おう」

店の前にある花壇のふちに腰掛けている客と目が合った。

「おはよう剣人さん。
今日も早いね」

「ああ、お前こそ。
まだ早いぞ。いいのか?」

「うん。
そんなとこ座ってたら風邪引くよ?
入って入って!」

剣人を招き入れると、
ヒカルは早速キッチンに戻ってコーヒーを淹れる。

オリジナルブレンドのコーヒー粉をドリッパーに入れ、円を描くように湯を注ぐ。

剣人はその光景が好きだ。

カウンターのいつもの席に腰掛けると視線をキッチンにやる。

ヒカルがポットをくるくると回す姿は、
まるでコーヒーが美味しくなるまじないをかけているようで。

「今日はマスターいないのか?」

「マスターは今日は仕入れに行ってるよ。
ランチ前には来るんじゃないかなぁ」

ふたりきり。

朝の光がよりほっとさせる。

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