4.
マグカップにふぅっと息を吹き掛け、
コーヒーをひとくちすすった京也。
「…ん?
いつもと違うな、これ」
独特の香りとほのかな甘みに京也は気付いた。
「このコーヒー、シナモンとはちみつを少し入れてあるんです」
京也さん疲れてるみたいだったから……。
そのヒカルの台詞に驚いた。
そんな素振りを見せたつもりがなかった。
むしろ彼女の前ではネガティブな事があっても何でもないような顔をしていると思っていたからだ。
「ハハッ。
お前には全部お見通しってワケか……」
「少しはリラックスできました?」
お前の顔見れただけでも俺には癒しなのに、
これ以上俺を骨抜きにする気か?
京也の苦笑いにヒカルは優しく微笑んだ。
「ヒカル、手」
「手?」
「うん。
手、握らせて」
差し出された小さな手を京也は愛おしそうに両手で包み込んだ。
そしてその指先に唇を付けて目を閉じた。
「なんでわかっちゃうかなー」
「なんとなく、元気なさそうだったから」
寂しそうな顔をしたのはヒカルじゃなく京也のほうだったのかもしれない。
「おエライさんの話でちょっとくじけてたんだけど、
お前のおかげで元気出たわ」
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