8.
何の事?と疑問を投げかける前に、
ヒカルの唇は慎之介の唇に塞がれてしまった。
「ふっ……はぁっ……」
何度も角度を変えながら、
歯列を舌でなぞってくる。
「やっ……し……ん……!」
ヒカルは声を出そうとするが、
漏れるのは息をばかりで言葉にならない。
慎之介の手が耳たぶに触れ、
キスのせいで敏感になってしまったヒカルはそれだけで震えた。
やがて唇が離れた。
慎之介はいつもの優しい笑顔だが、
ヒカルは……
「あれ?
さっきより赤くなってる……真っ赤だ」
「誰のせいですか……」
「だって僕たち双子じゃないから問題ないよね?」
またあの笑顔。
ヒカルもこの笑顔にどうも弱い。
「そうじゃなくて……」
「え?風邪を僕に移して欲しいだけだよ?」
そしたらヒカル、元気になるでしょ?と、
慎之介は言った。
「そんな事したら、
また司さん達に迷惑かけちゃうんですよっ」
ヒカルは必死に説教するが、
慎之介はくすっと笑った。
「大丈夫だよ。
僕、こう見えて体力はあるほうだから」
そう言うと慎之介はヒカルの額にちゅっとキスをした。
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