5.

慎之介が部屋に入ると、
レースカーテンが閉め切られ、
仄暗い空間が広がっていた。

広がると言ってもそれ程広くなく殺風景だ。

足を踏み入れた事のないその部屋を、
慎之介はキョロキョロと見回してしまう。

一通り見回して、
慎之介はソファーに目をやる。

ベージュのカバーが敷かれたソファー。

ヒカルはブランケットをかけられ眠っていた。

熱のせいか、
額にはうっすら汗をかいているようだった。

慎之介はソファーの横に跪き、
その額をそっと撫でた。

「すー……」

ヒカルは少し身じろいでまた寝息を立てた。

慎之介はブランケットから少し顔を覗かせたヒカルの細い指先をギュッと握った。

そしてそれを頬に寄せた。

「ヒカル」

起こさないように、
でもどこかで目を開いてくれるのを期待して、
慎之介は小さな声で呼んだ。

「ん……」

もちろん目を開きはしなかったが、
ヒカルは寝返りを打って慎之介の方を向いてくれた。

長い睫毛はしっとり濡れ、
頬がほんのり桃色に染まっている。

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