4.
ドンドンドン!
ドンドンドン!
「なんじゃうるさいのう」
閉めた店のカウンターでコーヒーを飲みながら新聞を読んでいたマスター。
それを邪魔するように誰が店のドアを叩いた。
クローズの看板の横に臨時休業を詫びるビラを貼ったというのに。
マスターは渋々腰を上げドアの前に立った。
「誰じゃ。
今日は休みと書いておろう」
「ヒカル!ヒカル!」
その声には聞き覚えがあったが、
マスターは誰かまではわからなかった。
仕方なくドアの鍵を開けた。
「あ……」
「今日は臨時休業じゃが?」
マスターが不機嫌そうに見上げたのは慎之介だった。
「ごめんなさい……。
あの、ヒカルは……?」
「あいつなら熱出して寝とる」
ここの所忙しかったから無理が祟ったんじゃろうて。
誰かさんが頻繁にデリバリーを注文するしの……。
マスターは少し嫌味を言ってみたが、
慎之介の耳には入ってないようだ。
慎之介は勝手に厨房奥の階段へ向かおうとした。
「コラ!あいつなら寝ておるわい!」
マスターは慎之介の腕を掴んで止めようとした。
「ごめんなさい。でも心配だから……」
慎之介の顔は焦燥感でいっぱいだった。
目にはうっすら涙を浮かべている。
マスターは深いため息をつき、腕を離した。
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