1.
「僕、もっと美味しいドーナツが食べたい……」
「シン、誰のせいで押してると思ってるんだ。
我儘言うな」
「そうだ!ヒカルに持って来て貰おうよ!
僕、電話するね!」
「聞いちゃいねぇ……」
ライブのリハーサル中。
何度合わせてみても慎之介だけ合わない。
司や魁斗、
スタッフにも疲れの色が出てきた。
スタッフが気を遣って買ってきた差し入れにも、
慎之介はこのありさま。
その場にいる全員の溜息など、
慎之介の耳には入っていないだろう。
プルルル……
プルルル……
プルルル……
受話器とにらめっこする慎之介。
今日は定休日じゃないはず……。
「あれ??」
出ない。
何回鳴らしても出ない。
「シン、いいかげんにしろ。
そんな元気があるならちゃんと歌え」
「ヒカルも忙しいんじゃねぇの?」
「……ちぇーっ」
つまらなさを全面に出した顔で慎之介は仕事に戻る振りをした。
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