6.
動揺のあまり即座に帰ろうと踵を返した時、
咄嗟に腕を掴まれた。
「わっ!」
近くの椅子に足を取られかけたが、
間一髪腕を引かれ……。
「……ったく、危なっかしいな」
剣人さんに抱き締められてしまった。
……裸の胸に。
「……あっ……、
ごめんなさい」
恥ずかしさから離れようと身じろいだが、
剣人さんの腕にくっと力が入った。
そんなにきつく抱き締められているわけじゃないのに、
息が詰まるほど体の芯みたいな所がきゅうっと痺れた。
不意に目を閉じると、
剣人さんの鼓動が微かに聞こえた。
……それよりも自分の鼓動の方がうるさいんだけれど。
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