5.
「はぁ〜!食った食った!」
「お粗末さまでした」
食べ終わった頃は日付が変わりそうな時間だった。
いくら芸能人とはいえ寮住まいの彼だ。
でも珍しく透がたくさんお土産話をしてくれた。
それだけでヒカルは幸せだった。
「うわっ!もうこんな時間じゃんか!」
お前言えよな、と憎まれ口を叩かれても、
なんだか許せてしまう。
「早く帰んなきゃね?
……帰って欲しくないけど」
席を立とうとする透に、
思わず本音が漏れてしまった。
「何言っちゃってんのお前」
「あっ!ごめっ……」
不意に抱き締められた。
「……俺だって離れたくねぇよ」
ぎゅうっと力を込められると、
心臓がきゅうっと締め付けられてしまう。
「透さん……」
ヒカルもその背中に手を回した。
「はぁ……明日もお前、
客に美味い飯作るんだろ?」
「うん。だってそれが私のお仕事だし……」
「あー帰りたくねぇ。
ずっとここで変な奴来ないか見張っててぇ」
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