3.
「ずっと抱き締めたかったんだ。
やっと……」
手は繋いでいたけれど、
やっぱり足りなかった。
魁斗さんはそう耳元で囁くと、
更に腕に力を込めた。
はぁっ……と溜息が耳たぶをくすぐる。
胸がきゅうっと苦しくなって、
わたしは息を止めた。
「魁斗さん……」
「うん?」
「今日は1日ありがとう」
「んだよ急に……」
首筋に顔をうずめられ、
少しくすぐったかったけど、
照れてるんだってすぐにわかった。
「映画、面白かったね」
「ああ、お前と一緒だったしな」
「カラオケも楽しかったね」
「ああ、お前がいたからな」
お前が隣にいてくれたから、
何もかもが明るいんだ。
魁斗さんはそう言ってくれた。
お前が隣で笑ってくれてたら、
俺は何でも出来る気がする、って。
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