1.
「魁斗さん、
送ってくれてありがとう」
デートの帰り道。
魁斗さんはいつも店の前まで送ってくれる。
今日は映画を観てカラオケ行って、
買い物も付き合ってくれた。
魁斗さんが持ってくれているわたしの荷物を受け取ろうと手を伸ばすと……
「まだ時間あんだろ?
話す時間くらい」
空いている方の手でわたしの手を掴む魁斗さん。
いつもよりトーンを下げた声にドキッとする。
「少しなら……」
明日も朝早いけれど……
わたしももう少し一緒にいたい……。
「じゃあ、こっち。
来い」
ぐいっと腕を引かれた。
どこへ連れて行かれるの?
「そこまで時間ないよ?」
出そうになった足を止め、
魁斗さんを見上げる。
「ここだと
マスターに見つかったら
うるさいから」
魁斗さんは薄明かりの中、
こちらを見ずにわたしの腕を強引に引いて歩き出した。
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