11.
「……あのっ、
お皿お下げしますねっ!」
その後ろ姿に急に目が覚めた気がして、
わたしはいつも通りを装うのに必死になった。
カチャカチャと食器を片付けていると……
「わっ!」
突然剣人さんに抱き寄せられた。
「……終わったら店行くから、
いつもの、用意しといてくれ」
「……!」
耳元で囁くなんて……!
恥ずかしさから顔を上げられなくて、
無言で頷くのが精一杯。
そして剣人さんはわたしの頭を軽くポンポンと叩いて、
控え室を出て行った。
「……もう、
ズルいんだから……」
わたしはいつも通りに顔なんて出来なくて、
両手で真っ赤になっているであろう顔を覆った。
END
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