あなたを想うのはもうやめます






「―必ずや、某は佐助と共に―」


貴方さまは、私に約束してくださいました。
必ず帰ると、約束してくださいましたのに。







力のない私には、ただただ無事を祈る事しかできなくて。
貴方さまに頂いた簪を眺めては、貴方さまに想いを馳せる日々。

―ご無事だろうか。
―お怪我はしていないだろうか。
―お風邪を召してはいないだろうか。

朝から晩まで、想うのは貴方さまだけ。
恋しくて苦しいのです、幸村さま。






「ひ、姫様ぁぁぁ!」

血相を変えて、部屋に駆け込んできた侍女の姿に、ヒタヒタと黒い闇が胸の内に広がる。
そんな事は、ない。
先日だって、あの方は元気だと、もうすぐだと、文を下さったばかりなのだ。

「そんなに慌てて、一体どうしたのです」

声が震えた。
長年付き添ってくれていた侍女は苦しげに悲しげに顔を歪めた。

「っ真田源二郎幸村様、討死なされました…。」

「―嘘だ。」

「姫様、」

「っ嘘を申すな!幸村さまは必ずっ―」

フラリと崩れ落ちた体を、侍女が支える。
貴方さまの顔が、浮かんでは消える。

「いやっ…いやぁ!」

ボロボロと涙を溢す私を侍女はきつく抱き締めた。
この戦国の世、いつ別れがきてもおかしくはない。
それでも、あの方だけは、私の元に帰ってきてくれると、そう信じていた。
もう、貴方さまに会うことも叶わない。
貴方さまがいないこの世が、苦しい。

「ゆき、むらぁ…」



こんなに苦しい思いをするなら、私は貴方と出会わなければよかった。
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