好きのうち…?






「ああ、もう」

佐助は呆れたようにぼやいて幸村の腕に包帯を巻いていく。
幸村は申し訳なさそうに眉を下げ佐助の言葉に耳を傾けていた。
まるで母親に叱られた子供のようで、その光景を弁当をつつきながら見ていた各々は苦笑を盛らした。

「HA!真田は今日も派手にやらかしたな」

「竜の旦那は茶化さないで。…本当に、いい加減にしなよ旦那は」

佐助はけらけらと笑う政宗を一睨みで黙らせ、仕上げとばかりに幸村の額に絆創膏を貼ると、救急箱の蓋を閉じた。
それは幸村が怪我をするようになってから、佐助が用意したものである。
幸村はそんな救急箱の赤十字マークを見つめ小さく呻いた。

「…悪い、ありがとう佐助。」

佐助は、ふうと息をつくと困ったように眉をハの字に下げた。
こんなに素直に謝られると佐助もむやみやたらに怒る事は出来ないし、佐助は知っているのだ。
本当は誰よりも、幸村が心を痛めている事に。
それでも、佐助は口を出さずには入れない。
幼馴染みとして、彼の一番近くにいる身としては、


「旦那はもう少し我慢して素直になればいいのに、」












「最低最低最低。」

ツナもそう思わない?優にそのように同意を求められても綱吉は抜けた返事しか出来なかった。

「真田くんはいつもああだ!他の子には話し掛けられただけで赤くなったり破廉恥とか言って逃げたり、可愛らしいのに!私の前では何あの憎たらさ!キャラ作り?私は女じゃない的な?あー思い出しただけでイライラしてきた。そう言えば昨日も…」

うーん、と綱吉は首を傾げ、考える。
優の話には必ずと言っていい程幸村の名前が出る。
それは無意識なのだろうけど、いつだって真田くんは…と優は溢す。
大半というか全てが幸村への悪口になっているのだが。
綱吉は、幸村と優には仲良くして貰いたいと思っているのに。
誰だって、友達と友達が日々争う姿など見たくないのだ。

「優はさ、」

どうしたら、二人が仲良くなれるだろう、とそんな事を人知れず考えていた綱吉の耳に山本の落ち着いた声が入った。
何かを諭すような声色。

「真田の事が好きなんだろ?」

―え、と綱吉の思考が止まったのは、優の赤く色付いた頬と不安定に揺れる瞳を見たからだった。

「え、えええ山本な、え、え、優!?それ、」

「ち、違う!好きじゃない!嫌い!大嫌い!」

ブンブンと慌てて首を振る優の、らしくない姿に綱吉は目を丸くして、微笑んだ。
とても、優が愛らしく見えた。
日頃のあれは、つまり彼女の愛情の裏返しで照れなのだ。
なんとも彼女らしいではないか。
あまり、自分が心配する事ではないのかも知れないなあ、と綱吉は思った。






“好きならさ、慈しむ事も大事だよ”

“好きじゃない(すき)嫌い(すき)大嫌い(大好き)”





お互いがお互いを強く、それこそ―


嫌いな程愛しているのだ。





HAPPY NEW YEAR 2011
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