ご主人様呼びは男の夢とかなんとか2
―覚悟は出来てるのでござるな?
「えええええ!さ、真田くん…!」
ジリジリと、緩い笑みを浮かべ近づいてくる幸村に優は尻込みして後退る。目が笑ってない、本気だ!
しかし、限度というものがあり背中に壁を感じた優は逃げ道がない事を悟った。
「くっ、」
「伊藤殿。」
幸村の手が伸びる前に優は決心を固めた。
もう、どうにでもなれ、とある意味やけくそになっていたのだった。
「―ご主人さま」
優はにこりと幸村に笑いかけ、その懐に自ら入り込んだ。
幸村は目を丸くして、そして恥ずかしそうに顔を伏せた。
「伊藤殿、」
「ご主人さま、ごめんなさい。私が、悪かったです。だから、」
突如ぽろぽろ、と優の瞳から零れる涙に幸村は慌てた。
「優っど…の」
「だから怒らないで、」
お願い、とされれば幸村は怒ってなどおりませぬ!と何処からか取り出したタオルでその涙を拭う。
「優殿、顔を上げてくだされ。」
「…うん、ごめんね。
ゴシュジンサマ!」
ガチャリ、手元から聞こえた音に幸村は一瞬何が起きたのかわからなかった。
「は、」
「あは☆」
両手を解放させケロリ、と笑う優の姿がそこにはあった。
幸村ははっと自分の手首を見た。
繋がれた鎖。
幸村は自分の着ていたパーカーのポケットを探る。
「真田くん甘い、甘いよ。」
ほら、と鍵を見せびらかす優に幸村はもう何も言えなかった。
「ご主人さま、」
その声は冷たくて幸村は背筋がゾクリとした。
それでも優は繋がれた幸村に笑顔を見せた。
「当分そうしてて下さいね」
私は帰りますから、そう言って優はまるでゴミを見るかのように冷たい目をして部屋を出ていった。
頭に着けていたカチューシャを幸村につけるのを忘れずに、
部屋にはふりふりのカチューシャをつけた男が鎖で繋がれる、というシュールなものが残されたのだった。
「優殿おおおお!」
「今度という今度は許せん。」
「あ、優ちゃん帰るの?」
「猿飛くんキミも覚えといてね。夕食を優先させたこと私忘れない」
「優ちゃん目が怖、いやごめんなさい。」
**********
ぼたんさんに贈ります。お待たせいたしました。これからもよろしくお願いいたします><!
しおりをはさむ