片惚れ?それとも、






さんさんと輝く太陽が地面を焦がすなか、沸き上がる黄色い声援と熱気。特定の生徒がゴールにサッカーボールを打ち込むとそれらは更に激しさを増した。
そんな、練習試合と言えども白熱している部活動をグランド近くの涼しげな木陰から見つめるのは、理科の教師であり、サッカー部とはまったく関係ない写真部顧問の私だ。なぜその無関係な私がここにいるのかというと、ちゃんとした理由がある。

サッカー部をはじめとした様々な部活が夏の大会に向けて練習している最中、こんな萌え、げふん素敵なシャッターチャンスを逃すほど我が写真部は甘くない。しかしながら、夏の暑さというものは侮れないなにかがあるわけであって。
部活顧問の名のもとに素敵な写真を撮ってこいと命ずると可愛い同胞たちは水泳部だの、バスケ部などに繰り出していき、ポイントを心得ているではないか水泳部はナイスすぎるなんて流暢に考えていたのも束の間、 サッカー部に向かって行った子が熱中症で倒れてしまったのだ、サッカー部の素敵写真を…!と言い残して。
だから私が代わりに撮影に来たわけだが、なんというか、青春とはなぜこんなに胸が高鳴るのだろうと疑念を抱くほど満喫させていただいている。
きらりと光る汗に、時折見えるお腹と背中のチラリズム、とどめは見え隠れする何とも言えない膝小僧だ。


「ああ、ごちそうさまです。それにありがとう望遠レンズ!ばっちり見えるよカメラ最高!」

「あら珍しい優先生だ。」

「げ、猿飛先生…。」

「げ、とはひどいなー。」


ぽん、と真横から肩を叩かれ撮影を中止し隣に視線を向けると、そこにいたのは同じ学年の猿飛先生。サッカー部の顧問であるこの人がここにいるのは不思議なことではないが、気配はよくなくすし、そのくせ神出鬼没でたまに心の中を見透かされていそうで私は少し苦手だ。いい先生だとは思うのだけど。
やたらと教師陣の女性をはじめ生徒、保護者はたまた他校の人間までもに人気があるこの先生は見た目の予想に反し主婦的発言を繰り返すので、苦手といえどもそこだけは好感をもっている。
そんな猿飛先生がカメラをまじまじと興味深そうに見つめるため、苦手な猿飛先生からちょこっと苦手な猿飛先生に昇格した。


「へぇー、写真部って結構本格的なカメラ使うんだね。一眼レフ、だっけ?それ。」

「あ、よく知ってますね。」

「どう、うちの部活でいい写真とれてます?」

「そりゃ、もう!いいモデルさんばっかで!」

「そっかー。あ、あの子なんてどう?真田君っていうんだけどさ。」

「え?ああ、真田君ね。」


二年生なのにもうエースなんだよ、と自分のことのように誇らしげに言ってのけた猿飛先生が指差す方を見れば、サッカー部の中でも一際視線を集めグランドを駆け抜ける我が教え子の姿。走るたび後ろに伸びるひとふさの髪の毛がゆれ、何かの尻尾を連想させる。
ああ、あの子は確かにいいモデルで、いろいろ私の脳内を活性化させてくれるいい生徒だったな、なんて考えながら彼を目で追った。


「そういえば、真田君の担任って優先生だったね。知ってて当たり前か。」

「そうなんですよ、私の注目株。」

「へえ、初耳。」

「真田君だけじゃなくて伊達先生とセットなんですけどね。」

「伊達ぇ?なんでまた。」

「こっちの都合で。ってかたった今先生もセットになりました。」

「俺様よくわかんない。」

「分からなくて大丈夫です。」


ふうん、そう吐き捨てるとポケットから笛を取りだしそれに息を吹き込んだ。ピッーと響く甲高い音に一瞬びくりと肩を揺らしたが、猿飛先生に知られるのが癪で平然を装う。
残念なことに現実とはなかなか上手くいかないもので、その次に大きな声できゅうけーい!とか叫ぶもんだから完全にびっくりしてしまってカメラを落としかけた。
タイミング悪くその場面を目撃した猿飛先生に軽く笑われてしまって、恥ずかしさのあまり顔に熱が集中する。全部猿飛先生のせいだ。







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