「私がお世話になっている茶屋なんですけど、そこの団子がとても美味しいのです!」

ニコニコと微笑むおゆうに連れられて佐助は茶屋の暖簾をくぐる。
あの簪はおゆうの髪に飾られていた。
まるで誰かを彷彿させるような、綺麗な赤だと佐助は思った。

「ただいま帰りましたー!」

「遅せぇぞおゆう!
お客さんに茶煎れろ茶!」

「はーい!あ、佐助さんも今お茶淹れますから座って下さ―」

「おゆう殿ぉぉぉぉ!」

「え?」

座って下さい、と続く言葉はある男に遮られた。
何処かで聞いた事のある声。
奥から出てきた男に、佐助は驚愕の為、固まった。
(嘘だろー!?)
男はそんな佐助も眼中にないのか、全く気づかない。

「―源二郎さん!こんにちは」

「おゆう殿!大丈夫でしたか?使いに行かれたと聞きましたがあまりにも遅いので某肝を冷やしたでござ…る」

その瞬間、偶然にも真田源二郎幸村と佐助の視線が交わった。
幸村は忍びの姿を上から下まで、確認するとぽかん、と口を開け停止した。

「源二郎さん?」

「おゆうちゃん、ごめんね熱いお茶貰える?」

「あ、ハイ!ただいま!」

奥に消えるおゆうの姿を見送って佐助ははあ、と息を吐いた。
それによって幸村はハッと我に返った。

「さ、佐助!違うのだコレは!」

「ふーん、俺様の団子じゃ満足出来ないわけだよね?」

「佐助ええええ!」

にやにや、とからかうように佐助が言えば幸村は瞬時に顔を赤くした。

「あれ、お二人はお知り合いでしたか?」

お茶を盆で持ってきたおゆうがキョトンとした顔で佐助と幸村を見比べる。
佐助はにこりと笑っておゆうからお茶を受け取った。

「(あ、美味しい。)」

ほう、と息をついた佐助は顔を赤くさせたままおゆうと喋る幸村を見てクスリと笑った。





今日はお赤飯を炊こう

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