青春×××群雄劇(仮)(bsr×RE!) | ナノ
四限目 家庭科
「前田まつと申します。どうぞよしなに」
そう微笑むまつは、自分の身の丈程の大きなしゃもじを片手で持っていた。
優はあれが利家先生噂の奥さまかあ、とふむふむ頷いていた。
利家先生とまつ先生はなんて似合いの夫婦だろう、と
そしてあのしゃもじはなんだろう、と。
「大切なのは愛情でございます!」
「(良妻賢母って感じがするなあ…。)」
ぐぐぐぐうう。
ふいに隣から聞こえた音に、優はパチクリと瞬きを一回。
そしてゆっくりと隣の幸村の顔を覗きこむ。
幸村は真っ赤に染まった顔を隠すように、机に伏せていた。
幸村は羞恥で死にそうになった。
「(は、恥ずかしいでござるうううううう)」
「真田くん真田くん」
「(うう…。)…はい」
「あげる」
そう言って手渡されたレモンキャンディを幸村はポカンと呆けた顔でみつめる。
「まつ先生には内緒だよ授業中だからね」
クスクスと笑う優の顔をみつめながら幸村は火照る顔を押さえた。
「あ、ありがとうでござる」
「んーん。」
どこにでも売っているレモンキャンディ、だがなぜか食べるのが勿体なくて仕方がない。と幸村がそのキャンディを口に入れるまでかなりの時間を要した。
「…あの、まだあるよ?」
「!」
そう言って優はまた幸村の手にキャンディを落とし笑ったのだった。
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